古今東西の香りを見て楽しむ。「香りの器」展がパナソニック汐留美術館でスタート
高砂香料工業株式会社が長年にわたり収集してきた、香りにかかわるコレクションから約240点を選りすぐり紹介する展覧会「香りの器 高砂コレクション展」が、東京・汐留のパナソニック汐留美術館で開幕した。
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いつの時代も人々を魅了してきた香料や香水。そうした香りにはそれぞれ独自の器がデザインされ、いまに残されている。そんな香りの器に着目した展覧会が、パナソニック汐留美術館で開幕した「香りの器 高砂コレクション展」だ。
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高砂コレクションとは、1920年2月に合成香料を製造する会社として創業した高砂香料工業が所蔵するコレクション。高砂コレクションは、同社が64年に水戸徳川家伝来の「梅松蒔絵十種香箱」を譲り受けたことをきっかけにスタートし、その後、古代の香油瓶から20世紀の香水瓶、あるいは日本の香道具や香木、さらには香りに関する絵画やポスターまでも含む、香りに関する総合的なものとなっている。
同社の特別協力のもと開催される本展では、この高砂コレクションから約240点もの資料・作品を展覧。会場は「第1章 異国の香り」と「第2章 日本の香り」で構成されている。
まず第1章では、香りの歴史を古代にまで遡る。香りの歴史は、紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトから始まった。当時は宗教的な儀式において香油や乳香、没薬などが使われただけでなく、王や貴族などが生活のなかでも用いていたと考えられている。
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その後、古代ギリシア・ローマ時代には香料や香油が普及し、ギリシアでは陶器の、ローマではガラス製の香油壺や軟膏壺が数多くつくられた。また中世から近世にかけては、オリエントやイスラーム世界で蒸留技術によって多くの香水が生み出され、ガラス容器に保存して利用されるようになっていく。いっぽう西ヨーロッパでは、ポマンダーという容器に入れられた練り香が中心だったという。
香水文化は17世紀に花開き、18世紀には庶民の間にも香水文化が波及していく。19世紀以降は、アール・ヌーヴォーやアール・デコの作家たちがガラス工芸の粋を集めた香水瓶を手がけるようになり、20世紀には大量生産の時代に突入する。
本章では、この歴史をたどるように、紀元前につくられた幾何学模様を刻む香油壺や1~2世紀頃の初期ガラス製の香油壺から始まり、17世紀以降につくられた香水瓶や関連資料を展示。
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ヨーロッパで初めて白色陶磁器の焼成に成功したドイツのマイセンによる極めて精巧な色絵香水瓶の数々や、煌めくボヘミアン・ガラスの香水瓶、エミール・ガレやドーム兄弟によるアール・ヌーヴォーの香水瓶などは白眉だ。
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また、ルネ・ラリックの作品は重要な位置を占める。ラリックは1910年代にコティ社から香水瓶のラベルデザインを依頼され、以降香水瓶そのものの創作にも積極的に携わるようになった。会場には、ラリックがラベルデザインを初めて依頼されたコティ社の香水「レフルール」の香水瓶をはじめ、ラリックがオリジナルで製作した香水瓶が並ぶ。生涯で約400種類の香水瓶をデザインしたというラリック。その一端を堪能したい。
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そのほか、本章ではゲランやクリスチャン・ディオール、スキャパレリなどのファッションブランドによる香水瓶、香水のカタログ・ポスター、あるいは化粧道具など様々な資料が目を楽しませてくれる。
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続く「第2章 日本の香り」は、その名のとおり日本の香りの歴史を紐解くもの。日本の香りの歴史はヨーロッパ諸国などに比べ遅く、仏教が伝来した6世紀以降に始まった。その文化は独自の道を歩み、宗教儀式や宮中から上流階級の遊びへと発展し、室町時代には「香道」という芸術までもが誕生した。
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本章では、蒔絵が施された香道具箱などの豪華絢爛な道具類をはじめ、板谷波山、濱田庄司、河井寛次郎らが手がけた香炉・香合、蘭奢待をはじめとする香木などを展示。1章との対比によって、日本ならではの香りの世界がいかに発展してきたのかが実感できるだろう。
高砂コレクションを通して、香りの文化を目で楽しんでほしい。
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