横尾忠則に15年にわたり寄り添っていた愛猫タマ。そのタマがこの世を去って以降、横尾はタマをモチーフとした作品を描き続けてきた。その作品群を一堂に展示する個展「タマ、帰っておいで」が東京・日本橋の西村画廊で始まった。
横尾忠則は愛猫家として知られており、猫という存在について、「アーティストのミューズであり、美の化身であり、アーティスト自身でもあり、アーティストが本来備えていなければならない性格をすべて持っている(『ひととき』[ウェッジ社]2020年1月号より)」と語っている。
そんななかでも、タマは特別な存在だったようだ。元々野良猫だったタマは、あるときから横尾家の裏庭に居着くようになり、以来15年間、同じ屋根の下で暮らしをともにした。横尾はタマについて「人間臭いし、情がある」猫だったと述懐している。
本展に並ぶ作品群は、横尾が生前のタマの写真をもとに、タマがこの世を去った2014年から今年にかけて描かれた連作だ。タマを単独で描いたものもあれば、横尾とタマが一緒にいる様子を描いたものもある。その画面からは、横尾のひとかたならぬ愛情を感じ取れるだろう。
なお、本展ではギャラリーで横尾の画文集『タマ、帰っておいで』も販売。横尾とタマのあいだにあったであろう親密な空気に触れてほしい。