横浜・馬車道の、旧横浜生糸検査所附属生糸絹物専用倉庫を復元した「KITANAKA BRICK&WHITE」。その3階にダンスのプラットフォームとなるダンスハウス「Dance Base Yokohama」(以下、DaBY)がオープンする。
DaBYは、プロフェッショナルなダンス環境を整備し、クリエイター育成に特化した事業を企画・運営する施設。アーティストによる創作、ワークショップ、トライアウト公演といった実践の場、さらに書籍や映像を中心としたアーカイブ機能を持つ。
DaBYの空間設計を手がけたのは、オンデザインパートナーズ。施設は、広さ約190平米のアクティングエリアを中心に、回廊上に周回するアーカイブエリアや楽屋、バックヤード、事務所、キッチン等で構成される。
アクティングエリアは、トライアウト実施時には椅子等を設置して会場に。また、可動式の壁面部分は目的によって開閉が可能となっており、白壁だけでなく、自然光を取り入れたり、ブラックカーテンを引くなど、フレキシブルに会場を演出できる。
また、植物とともに棚が設置された回廊上のアーカイブエリアには、ダンス関連の書籍アーカイブが構築される予定。また、映像アーカイブの蓄積も予定しており、上映会等も実施する計画だ。
DaBYの運営・管理を行うのは、日本のコンテンポラリーダンスの発展に寄与することを目的に2019年に設立されたセガサミー文化芸術財団。アーティスティック・ディレクターは愛知県芸術劇場・シニアプロデューサーの唐津絵理が務める。
唐津は同施設のビジョンについて以下のように語る。「日本においてダンスハウスという施設が希少ななか、アーティストたちの長期的なクリエイションを支援し、さらに若手を育成する場として機能させたい。最初の1年間はまず実験の場となるだろう。公演以外にも、プロフェッショナル向けの定期的なダンスレッスンや、ダンサーが創作の幅を広げる手がかりとなるような美術史、音楽理論、哲学といった分野のセミナー、あるいは雇用や労働面での法律の専門家を呼んだリーガル的なアドバイスなどを実施したい」。
また、DaBYは、振付家やダンサーのみならず、音楽家、美術家、映像作家、照明や音響のデザイナー、観客といった様々な人々の交流拠点としての役割を志向している。そのために、観客をつなぐエバンジェリスト(伝道師)として、振付家・ダンサーの小㞍健太を迎えた。「ダンスだけでなく、様々なジャンルの芸術に携わる人々が集まるハブとして機能することで、舞台劇場業界を改革する取り組みにもつなげられれば」。
日本では希少なダンスハウスの開設。コンテンポラリーダンスを媒体として、他の芸術ジャンルと連関しながら新たな価値をつくり出す場として期待したい。