衝撃的な世界観と驚異のパフォーマンスで観客を魅了してきた、ベルギーを代表するダンスカンパニー「ピーピング・トム」。ダンサー、俳優、オペラ歌手など異なる分野で活躍するアーティストが団結することで生み出される唯一無二のパフォーマンスは、ダンスシーンに新たな地平を切り開いた。
その作品は、「男女の人間関係」や「生命と死」といった普遍的なものをテーマとしていながら、「ピーピング・トム=覗き屋」という名前の通り、鑑賞者に幻想の世界を覗き見しているような感覚を引き起こす。そのパフォーマンスは、各国で表彰されるなど評価も高く、カルト的な人気を呼んでいる。
振付・演出を担当するガブリエラ・カリーソ曰く「空想や無意識的な瞬間、精神的に不安定な状態を舞台化します」とのこと。ダンサーたちの重力を感じさせないほど柔軟な身のこなしは、狂気的で美しくもあり、観る者を惹きつけるだろう。
東京の世田谷パブリックシアターでは、2009年に同カンパニーを日本で初めて紹介して以来、継続的に招聘公演を実施。そして今回、3月19日から21日までの3日間、母親にまつわる様々なイメージを持つシーンを多角的に描いた『マザー』が上演される。
複数の母親像についての物語であり、愛情や欲望、恐れ、苦痛、暴力性といった、母親にまつわるストーリー、意識的/無意識的な記憶やエピソードを探る本作。美術館や私邸の客間、病院の待合室、火葬場など、複数のイメージが共存する奇妙な空間を舞台とした無機質でトリッキーな作品だ。