世界文化遺産の京都・二条城を会場とする「artKYOTO 2019」が開幕した。本フェアを手がけるのは、日本最大のアートフェア「アートフェア東京」を主催する一般社団法人アート東京。
初開催となる今回は、31のギャラリーが出展。そのうちの11ギャラリーは京都に拠点を置いており、アートフェア東京とまた異なる、京都という土地が活きた顔ぶれとなった。
ギャラリーアンザイは、敷地内の外庭で、グラフィティ・アーティストMr Doodle(ミスター・ドゥードゥル)による、屏風へのライブペンディングを実施。フリーハンドによる線が、またたく間に屏風を埋めていく様子が、二条城を訪れる観光客たちの注目を集めていた。
メインの会場となる二の丸御殿の台所・御清所(だいどころ・おきよめどころ)は、江戸時代には「御料理間」と呼ばれており、調理を行う場所として使用されていた場所。天井には巨大な梁が渡り、重厚な雰囲気がただようこの空間に、24ギャラリーが介した。
玄関をくぐると、ロサンゼルスと香港に拠点を構えるOVER THE INFLUENCEが展示する、TAKU OBATAの木彫作品が来場者を迎える。TAKU OBATAのブレイクダンサーとしての身体表現を投影した本作には、二条城の空間にあわせて、白と黒をベースとする、落ち着いた彩色がほどこされたという。
玄関右手には、創業1847年の茶道具をおもに取り扱う清昌堂やましたが出品した、ガラスの茶室が鎮座する。この茶室《雪花庵(せっかあん)》は、ガラス作家の板橋一広と、建築家の浦一也の手によるものだ。本作について清昌堂やましたの担当者は、「現代美術ギャラリーと合同で出展するartKYOTO 2019に向けて新たな提案をしたかった。伝統的な茶室を、これまでとは異なる素材によってアップデートしようと試みた」と語った。
ミヅマアートギャラリーのブースでは、3月のアートフェア東京で、陶片をつないだ大作を展示して注目を集めた山口藍の作品を展示。平安時代に貴族の間で親しまれた「貝合せ」に着想を得て、貝がらを支持体に人物を描画したという作品は、山口が京都という土地性を意識してつくった新作だ。
シュウゴアーツからは三嶋りつ惠の新作が出品されていた。京都とイタリア・ヴェネチアを行き来しながら、ヴェネチアのガラスの特性を活かした有機的な作品をつくる三嶋。今回は中空にした吹きガラスに銀を流し込むという、伝統的なヴェネチアの鏡の制作手法を組み合わせ、存在感のある作品をつくりあげた。
また、二の丸御殿の台所・御清所には、調理中に毒の混入がないように台所を見張った「お毒見役」が座ったというやぐらがある。ここで現代美術 艸居は、やぐらの上から来場者を見下ろすかたちで、青木千絵の漆塗りの立体作品を展示。作品のユニークな見せかたを、会場の構造を活かしながら試みていた。
もうひとつの会場である東南隅櫓(とうなんすみやぐら)では、5ギャラリーが展示を行っている。江戸時代には見張り台や武器庫として使用されていたというこの建物では、古美術のギャラリーが目立った。古美術 柳は平安時代の木彫の仏像や、円山応挙の掛け軸など、歴史的に高い価値を持つ作品を展示。窓が少なく、明かりが入ってこない室内空間を生かしながら、照明によって作品の重厚な存在感を引き立たせていた。
今回の開催場所は歴史的建造物ゆえ、作品搬入の難しさや展示方法の制限、また冷房装置がほとんどないための室内温度の高さなど、ギャラリーからは今後に向けた課題点も聞かれた。いっぽうで、artKYOTO 2019の実行委員長でもある京都市長の門川大作は「世界中から人々が集まるイベントして、ぜひ来年以降も持続できれば」と、継続的な開催に意欲を示しており、京都市の当イベントに対する期待が感じられた。
二条城という歴史ある空間の中で、古美術から現代美術までを観覧し、購入できるという意欲的なイベント。ぜひ訪れてみてほしい。