東京・乃木坂の国立新美術館で、「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」展が開幕した。本展はトルコ・イスタンブールのトプカプ宮殿博物館が所蔵する貴重な宝飾品、美術工芸品を紹介するもので、約170点のうちほとんどが初来日となる。
オスマン帝国の第7代スルタン(皇帝)であったメフメト2世は1453年にコンスタンティノープル(現・イスタンブール)を征服し、78年にトプカプ宮殿を設立。1520年からのスレイマン1世(メフメト2世のひ孫にあたり、立法者・壮麗者と呼ばれる)の治世下では、法の整備やさらなる領土の拡大に伴い、オスマン帝国はさらなる栄華を極めた。
本展の冒頭に並ぶのは、《スルタン・メフメト4世の宝飾短剣》(1644頃)や《礼装用兜》(1550頃)など、宮廷工房で制作された衣装や宝飾品、武具、家具調度など、スルタンの威光をさらに輝かせるための宝物の数々だ。
そして、オスマン帝国の宝物を紐解くなかで重要なのがチューリップ(トルコ語で「ラーレ」)。チューリップはもともと帝国内に自生していたが、15世紀には園芸種の栽培がさかんになり、16世紀に入ると織物、タイル、陶器などのモチーフとして流行。18世紀には品種改良に多大な情熱が注がれ、2000におよぶ種が栽培された。
本展ではタイルや陶磁器のほか、細長い頸部が特徴的な《チューリップ用花瓶(ラーレ・ダーン)》(18~19世紀)や、チューリップを象った《水タバコ》(18〜19世紀)といった品々を紹介。「チューリップの宮殿」と呼ばれたトプカプ宮殿における華やかな暮らしを垣間見ることができる。
ところで、1890年にオスマン帝国の軍艦・エルトゥールル号が和歌山県串本町沖で遭難した際、日本人が救出活動を行ったというエピソードをご存知だろうか。この出来事はトルコと日本の友好のしるしとなり、オスマン帝国終焉後の1924年に正式な国交が結ばれてからも、両国の友好関係は継続している。
本展ではこうした両国の友好に光を当て、オスマン帝国のスルタンと日本の皇室との交流を示す品々が里帰り。商人の山田寅次郎を介してトプカプ宮殿に収められた飾り戸棚や七宝家具など、明治期の貴重な調度工芸品をはじめとする品々が並ぶ。
アジアとヨーロッパにまたがる交易の要地として、多様な文化を受容・融合し花開いたオスマン帝国の美意識を感じることのできる本展。宝飾品や美術工芸品だけでなく、書斎や礼拝の間、ハレル(女性の居室)、チューリップの咲く中庭など、トプカプ宮殿を体感できる展示空間も楽しんでみてほしい。