今年没後100年を迎え、世界的に注目を集めているグスタフ・クリムト(1862~1918)とエゴン・シーレ(1890~1918)。この2人が生きた、19世紀末から20世紀のウィーン世紀末美術にフォーカスした大規模展が、東京・六本木の国立新美術館と大阪の国立国際美術館で開催される。
同時期はクリムトやシーレのほかに、オスカー・ココシュカ(1886~1980)、オットー・ヴァーグナー(1841~1918)といった芸術家たちが活躍した、まさにモダン・アート、モダン・デザインの黄金期だった。
本展は、このウィーン世紀末文化を「近代化への過程」という視点から紐解くもの。1887年に開館したヨーロッパ有数の博物館であり、100万点もの所蔵品を有するウィーン・ミュージアムから、約400点の作品が来日するまたとない機会だ(大阪展は約330点)。
展示構成は、「啓蒙主義時代のウィーン」「ビーダーマイアー時代のウィーン」「リング通りとウィーン」「1900年ー世紀末のウィーン」の4章構成。
なかでも大きな見どころとなるのはクリムトだ。1897年にウィーン分離派を結成し、その初代会長となったクリムトは、美術のみならず音楽や工芸、建築など多岐にわたる芸術家たちと交流を持ち、大きな影響を与えた。
本展では、クリムト作品が47点来日。生涯のパートナーであったエミーリエ・フレーゲを描いた《エミーリエ・フレーゲの肖像》をはじめ、分離派会館の開館に際して制作された《パラス・アテナ》、図案集『アレゴリーとエンブレム』のために描いたクリムト初期の代表作で、その名を広めるきっかけにもなった《寓話》など、錚々たる作品が揃う。
また、クリムトがデザインした《第1回ウィーン分離派展ポスター》など、ウィーン分離派の関連資料も展示。加えて、同時代の絵画としてマクシミリアン・クルツヴァイル、カール・モル、マクシミリアン・レンツらの作品も展示することで、ウィーン分離派の独自性を際立たせる。
本展ではシーレも見逃せないポイントとなる。クリムトから影響を受けながらも、新たな表現を獲得しようと自らの世界を切り拓いたシーレは、28年という短い生涯の中で数多くの作品を遺した。本展では、シーレが1910~11年の間にテーマの中心としていた自画像のなかから、《自画像》を展示。そのほか合わせて22点の作品で、シーレの世界が堪能できる。
このほか本展には、建築家オットー・ヴァーグナーをはじめとするモダニズム建築の作品・資料、ビーダーマイアー様式の家具、ファッション、グラフィック、音楽家シェーンベルクが描いた絵画などの展示品も出展。美術を中心としながら、ウィーン世紀末文化を包括的に紹介する機会となる。
なお、本展同時期には展覧会「クリムト展 ウィーンと日本 1900」が上野・東京都美術館(2019年4月23日~7月10日)と豊田市美術館(7月23日~10月14日)で開催。2019年はウィーン世紀末文化に大きな注目が集まる年となりそうだ。