2018.10.12

クリムトは47点が来日。ウィーン世紀末文化を包括的に紹介する「ウィーン・モダン」展の内容が明らかに

19世紀末から20世紀初頭にかけて独自の文化が開花したウィーン。グスタフ・クリムトやエゴン・シーレらが活躍したこの黄金期と世紀末美術が誕生するまでの過程に焦点を当てた「ウィーン・モダン」展が2019年4月24日より国立新美術館で開幕する。

グスタフ・クリムト パラス・アテナ 1898 キャンバスに油彩 178×80cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz
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 今年没後100年を迎え、世界的に注目を集めているグスタフ・クリムト(1862~1918)とエゴン・シーレ(1890~1918)。この2人が生きた、19世紀末から20世紀のウィーン世紀末美術にフォーカスした大規模展が、東京・六本木の国立新美術館と大阪の国立国際美術館で開催される。

 同時期はクリムトやシーレのほかに、オスカー・ココシュカ(1886~1980)、オットー・ヴァーグナー(1841~1918)といった芸術家たちが活躍した、まさにモダン・アート、モダン・デザインの黄金期だった。

 本展は、このウィーン世紀末文化を「近代化への過程」という視点から紐解くもの。1887年に開館したヨーロッパ有数の博物館であり、100万点もの所蔵品を有するウィーン・ミュージアムから、約400点の作品が来日するまたとない機会だ(大阪展は約330点)。

 展示構成は、「啓蒙主義時代のウィーン」「ビーダーマイアー時代のウィーン」「リング通りとウィーン」「1900年ー世紀末のウィーン」の4章構成。

 なかでも大きな見どころとなるのはクリムトだ。1897年にウィーン分離派を結成し、その初代会長となったクリムトは、美術のみならず音楽や工芸、建築など多岐にわたる芸術家たちと交流を持ち、大きな影響を与えた。

 本展では、クリムト作品が47点来日。生涯のパートナーであったエミーリエ・フレーゲを描いた《エミーリエ・フレーゲの肖像》をはじめ、分離派会館の開館に際して制作された《パラス・アテナ》、図案集『アレゴリーとエンブレム』のために描いたクリムト初期の代表作で、その名を広めるきっかけにもなった《寓話》など、錚々たる作品が揃う。

グスタフ・クリムト エミーリエ・フレーゲの肖像 1902 キャンバスに油彩 178x80cm ウィーン・ミュージアム蔵
©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 また、クリムトがデザインした《第1回ウィーン分離派展ポスター》など、ウィーン分離派の関連資料も展示。加えて、同時代の絵画としてマクシミリアン・クルツヴァイル、カール・モル、マクシミリアン・レンツらの作品も展示することで、ウィーン分離派の独自性を際立たせる。

グスタフ・クリムト 第1回ウィーン分離派展ポスター(検閲後) 1898 カラーリトグラフ 97x70cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz ※大阪展では同作品の別版を出展

 本展ではシーレも見逃せないポイントとなる。クリムトから影響を受けながらも、新たな表現を獲得しようと自らの世界を切り拓いたシーレは、28年という短い生涯の中で数多くの作品を遺した。本展では、シーレが1910~11年の間にテーマの中心としていた自画像のなかから、《自画像》を展示。そのほか合わせて22点の作品で、シーレの世界が堪能できる。

エゴン・シーレ 自画像 1911 板に油彩 27.5x34cm ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 このほか本展には、建築家オットー・ヴァーグナーをはじめとするモダニズム建築の作品・資料、ビーダーマイアー様式の家具、ファッション、グラフィック、音楽家シェーンベルクが描いた絵画などの展示品も出展。美術を中心としながら、ウィーン世紀末文化を包括的に紹介する機会となる。

オットー・ヴァーグナー カール・ルエーガー市長のための椅子 1904 ローズウッド、真珠母貝による象嵌、アルミニウム、革 99×63cm ウィーン・ミュージアム蔵
©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 なお、本展同時期には展覧会「クリムト展 ウィーンと日本 1900」が上野・東京都美術館(2019年4月23日~7月10日)と豊田市美術館(7月23日~10月14日)で開催。2019年はウィーン世紀末文化に大きな注目が集まる年となりそうだ。