2005年の初開催から今年で13回目を迎える「アートフェア東京」(以下AFT)。今年は海外18軒を含む、164軒のギャラリーが軒を連ねている。
古美術から、工芸、日本画、近代美術、現代美術まで、様々なジャンルの作品が集まる「ギャラリーズ」では、これまで同様「サウス・ウィング」が主に現代美術、「ノース・ウィング」が古美術から近代美術などで構成されているが、今年はとくに「サウス・ウィング」に注目したい。全体の展示面積が20%増加したという今回は、その効果を「サウス・ウィング」で感じることができる。1ブース当たりの面積が増えたことで、より大きな作品展示やゆとりある展示構成が可能になり、目を引くブースも多い。
|ギャラリーズ
会場でひときわ目立っていたのは、昨年東京に上陸し、今回がAFT初出展となるペロタンのブースだ。現代中国を代表するアーティスト・徐震(シュー・ジェン)の作品を紹介する空間は、作品イメージが大きくプリントされた壁紙や、畳の床などで世界観を統一。自らを「ポップ・アーティスト」と呼ぶ徐震による、中国の伝統的な立像とアフリカのマスクが組み合わされた彫刻をはじめとした、東西文化の遺産が融合した立体作品や絵画が並ぶ。
ペロタンと同様、今年AFT初出展となるのは、今月でオープンから1周年を迎えたKOSAKU KANECHIKA。メタリックな質感と独自の造形が特徴的な茶碗は、桑田卓郎による陶芸作品だ。桑田は、ファッションブランド・ロエベが2016年にスタートした「ロエベ
クラフト プライズ」(5月4日〜6月17日、ロンドンのデザインミュージアムにて作品が展示)の2018年度ファイナリストの1人。世界の注目を集める桑田のダイナミックな作品を楽しみたい。
URANOでは岩崎貴宏、小西紀行、西野達らの作品を紹介される。天井近くに展示される立体作品と、ブース外壁にある写真作品は、今週発表されたばかりの平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した西野達による作品。また、同じく出品作家の岩崎貴宏も同新人賞を受賞しており、話題のアーティストが集まるブースになっている。
ASAKUSAがフィーチャーするのは、ニューヨークとベルリンを拠点とする映像作家であり、オンラインジャーナル「e-flux」の創始者でもあるアントン・ヴィドクル。今回ヴィクトルは、20世紀初頭のロシア生まれた運動「ロシア宇宙主義」をテーマとした映像作品《ロシア宇宙主義》三部作の一部脚本をイラストレーション化。自身初の平面作品となる本作の売り上げはファンドレイジングとして、《ロシア宇宙主義》シリーズの制作費にあてられるという。
複数の作品が並ぶブースが大多数を占めるなか、大型の作品1点を堂々と展示していたのは、ミヅマアートギャラリーだ。山形を拠点に、妖怪や精霊、神々など、目に見えない精神的な存在の実体化を試みてきた金子富之の作品は、横5メートルほどの大作。和紙を支持体に墨、ペンを用いて書かれた緻密な描線には静かな迫力が宿り、会場でも目を引いていた。
青山|目黒は、昨今その活動に大きな注目が集まっている折元立身を個展形式で紹介。亡き母・男代とともに制作してきた「アート・ママ」シリーズの大判写真から、過去のプロジェクトポスター、折元が描いたドローイングまで、幅広い活動を続ける折元の一端に触れることができる。
|プロジェクツ
各ギャラリーが作家を個展形式で紹介する「プロジェクツ」が、今年は地下1階へと移動。地下2階のホールから、入場無料のロビーギャラリーに移ったことで、より多くの来場者の目に触れる機会が創出された。ここでは、KAYOKOYUKIやスプラウト・キュレーションなど11軒のギャラリーがそれぞれ一押しのアーティストをプレゼンテーションしている。
なかでもKAYOKOYUKIは、1978年生まれのアーティスト・今村洋平を紹介。一見すると彫刻を思わせる佇まいを持つ今村の作品は、すべてシルクスクリーンを数百〜数千回と重ねることで形成される版画だ。ふだんから登山に親しむ作家ならではと言える等高線をモチーフとした作品や、複雑な幾何学パターンを思わせる壁掛けの作品までその表情は多彩で、それらの横には制作工程を描き込んだキャンバス作品も並んでいる。
|ロビーギャラリー
このほか、ロビーギャラリーでは、「World Art Tokyo–パンゲア・テクトニクス–」展として、中国やイタリア、フランスなど各国の駐日大使が推薦する、各国代表の若手アーティストのグループ展を展開。同展では東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻修士課程の黒沢聖覇がキュレーションを務めている。
なお本年はAFTに加え、「3331 ART FAIR」(アーツ千代田3331、3月7日〜11日)、「ART in PARK HOTEL TOKYO」(パークホテル東京、3月8日〜11日)も同時に開催。会期中に運行される無料周遊バスを使ってアートフェアめぐりも楽しめる。