勅使川原三郎がダンスで迫るランボー詩集の反逆と理性。東京芸術劇場で新作公演

勅使川原三郎によるダンス最新作「ランボー詩集─地獄の季節からイリュミナシオンへ─」が、東京芸術劇場の芸劇danceに登場。反逆と理性を生きるダンスの上演は、8月11日、12日、13日。

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 勅使川原三郎によるダンス最新作 「ランボー詩集─地獄の季節からイリュミナシオンへ─」が、 東京芸術劇場の芸劇danceに登場。フランスの詩人アルチュール・ランボーの詩集をテーマにした本作の上演は、8月11日、12日、13日。

 勅使川原三郎は、ダンサー・振付家・演出家。1985年、宮田佳とともにKARAS(カラス)を設立。独自のダンスメソッドを基礎に、強烈な身体感覚に裏付けされた深い考察と舞台美術や音楽も手がける稀有な才能によって、多彩なダンス作品を生みだし続けている。昨年にはヴェネチア・ビエンナーレ・ダンスで日本人として初めて金獅子功労賞を受賞し、 国内では現代舞踊分野で初となる文化功労者にも選出された。

 勅使川原は、これまでにも文学・映画・絵画などの豊かなインスピレーションや、それらの作品を生み出すや偉大なアーティストたちをテーマとした創作に取り組んできた。東京芸術劇場ではこれまでに、萩原朔太郎の詩集をテーマとした『月に吠える』(2017年8月初演)や、芥川龍之介の小説の世界を編み上げた『羅生門』(2021年7月初演)などを上演している。

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 最新作となる今回は、勅使川原が10代後半に出会い、長年温めてきたテーマでもあるアルチュール・ランボーの詩集をもとに創作を行う。ランボーは、有り余る才能に恵まれながら、20歳で詩を捨て放浪の旅に身を投じた詩人だ。

 とりわけ詩と自身の創作について、「詩の精神的な、生き生きした力が、私を動かす、それが私にとってはダンス作品に変容するのです」と語っている勅使川原。ランボーという若い芸術家の人生のある一時期に、激しく揺れ動いた感情や精神その言霊に迫る本作は、詩集『地獄の季節』から詩集『イリュミナシオン』へ至る流れから、反逆と理性を生きるダンス作品が生まれたという。

ヴェネツィアで初演したオラトリオ『時と悟りの勝利』(ヘンデル作曲)より、左からハビエル・アラ・サウコ、佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ

 出演は勅使川原自身、アーティスティック・コラボレーターとして活躍する佐東利穂子、『羅生門』以来コラボレーションを重ねてきたアレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ団)、ヴェネチア・ビエンナーレで開催された若手育成プロジェクトで見出された逸材ハビエル・アラ・サウコ。4名は、今年5 月にイタリア・ マリブラン劇場で上演されたオラトリオ『時と悟りの勝利』(ヘンデル作曲、勅使川原三郎 振付・演出・照明・衣装)でも共演している。

 多様な芸術に親しみ、向き合い、表現を続けてきた勅使川原が、ランボーとの衝撃的な出会いから立ち上がらせた本作。才能あふれるこの4人のダンサーが、芸術家の魂と対峙するダンスでしか表すことのできない世界、今夏しか実現しない特別なダンス作品となるだろう。

編集部

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