東京・銀座のガーディアン・ガーデンが、第25回グラフィック「1_WALL」でグランプリを獲得した趙文欣の個展「Did you see the cat ?」を開催する。会期は4月4日〜5月13日。
趙文欣は1996年⽣まれ。中国・上海育ち。 2018年に上海外国語大学ジャーナリズム/コミュニケーション学院を卒業し、翌19年に来⽇。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科を卒業し、今年3月に多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻統合デザイン研究領域を修了予定だ。
趙は監視カメラに記録される人物の、リアルでプライベートな瞬間のイラストレーションを5つの映像作品にまとめた「Void Space | 真空空間」で第25回グラフィック「1_WALL」のグランプリを獲得した。
審査員を務めた服部一成は、趙の作品について「共通して、『視点』への強い意識があると思う。現実を静かに観察するための、対象との角度と距離が重要なようだ。1_WALLグランプリ受賞作は、監視カメラから見た映像を模して作られていて、『視点』そのものが作品化しているようでもあった」と評している。
本展では「ひとり空間」をテーマに、10センチ四方の小さな部屋を3DCGソフトウェアでデザインし映像作品に編集したものや、3Dプリンタを用いて制作した立体作品を展示。
それぞれの小さな部屋の中では想像と現実が混ざり合い、独特な世界が提示されている。この部屋で過ごす人は、見つからない猫を捜し続けたり、噴火寸前の火山の上で眠ったりと様々だ。コロナ禍をきっかけに一人の空間を意識することが増えた昨今、誰もが感じたことのある孤独や安心といった感情。数種類の部屋で、そうした多様な感情が表現される。
私は毎日箱の中で目を覚まし、そしてまた動く箱に入る。
そうこうし、私の目的地である別の箱にたどり着く。
箱には気分が良い時もあり、悪い時もある。
空間が時に大きくなったり、小さくなったりする。
好きな時もあれば、嫌いな時もある。
だから、私も時々箱を満たしたり、空っぽにしたりする。
たまに、私もこの箱から逃げ出す。
箱の中で、時々、ブラックホールに飛び込むような安心感を感じることがある。
目を閉じると、箱の中の空間が絶え間なく広がり、一日が一時間のように感じられ、時間は時を刻む意義がなくなる。
かつて過ぎ去った時間の中で、私は時折、存在しない猫を捜している。
もしかして、あの猫を見た?
(展示によせて)──趙文欣
なお会期中の4月19日には、アートディレクター、グラフィックデザイナーの上西祐理をゲストに迎え、オンライントークイベントを開催。こちらもあわせてチェックしてほしい。