老舗ギャラリー、銀座の「ぎゃらりい秋華洞」が、東京・神宮前に新しくオープンさせた現代美術ギャラリー「GALLERY SCENA」。ここで、山口みいな個展「ユンクス・エフスス・スピラリス」が開催される。会期は2023年2月3日~19日。
山口みいなは1996年東京都生まれ。2021年に多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域を修了した。これまで、折りたたんでコンパクトになるドローイングや、光や時間、空気などを活用したエフェメラルな作品を通じて、生活空間に適した新しい絵画のあり方を提示してきた。
「ユンクス・エフスス・スピラリス」という呪文のような本展のタイトルは、観賞用の植物として流通する螺旋藺(ラセンイ)の学名に由来するもの。その螺旋状に伸びる特徴的な茎は山口の描く線と親和性があり、日々の暮らしをより好ましく変えてくれる物質であるという点においても、山口のドローイングを象徴するような存在だ。
今回の展示会場「GALLERY SCENA」の”SCENA”は、ラテン語で「舞台」という意味を持っており、アーティストは勿論、コレクター、キュレーター、すべてのアート愛好者が交流し、新しい輝きが生まれる場となるよう願いを込めてつけられたという。
本展では、美術批評家・飯盛希をゲストキュレーターに迎え、作品の「意味」を「美術史的文脈」ではなく「ウェルビーイング」の観点からとらえなおすことを試みる。そして、日常を慈しむ山口のドローイング作品を通して、コマーシャルギャラリーにおける作品とその購入者との関係を、いかにして継続的かつ良好なものとして構築できるか模索するという。
本展開催に際して、山口みいなは次のようなコメントを寄せている。
日々、線を引いている。
様々なメディアを通して自分から出てくる線を見つめている。
時に布をコンパクトにパッキングし持ち運び、共に旅をするようにして痕跡を残し続けるという作品を制作したり、空気を使って時間の流れの中で変化するという作品を作っている。
空間にとらわれない状態で自分からポロポロと出てくるものを留め続けていくことで、いつしか不意に見える自身の形を確認したい。
線を引くという行為を通して他者とのコミュニケーションを取ったり、生活の中で自身の身の回りに発生するドローイングを発見し探求して行くことをこれからも続けてゆきたいと思う。
山口の作品と作品の境界は曖昧で、自由にひろがる線やおおらかに表現されるかたちが軽やかに絡み合う。そんな空間を自由自在に駆け巡る山口の作品世界を、ぜひ会場で楽しんでもらいたい。