多摩美術大学が11月21日、2020年春より開講する「TCLー多摩美術大学クリエイティブリーダシッププログラム」(以下TCL)についての発表会見を行った。多摩美術大学はこのプログラムを通じて、デザインとビジネスをかけ合わせたハイブリッド人材を育成し、デザインの方法論でビジネスをドライブさせる「デザイン経営」を社会に実装するという。
今回のプログラムでうたわれているデザイン経営とは、デザインによって日本企業の競争力を高めることを目的に、2018年5月に経済産業省・特許庁が「『デザイン経営』宣⾔」として取りまとめた報告書で方針づけられたもの。
多摩美術大学教授であり、TCLの構想と起案を進めてきたアートディレクターの永井一史は、デザイン経営が必要とされる背景を以下のように語った。 「社会が変容し、VUCA(激動、不確実性、複雑性、不透明性)の時代と言われている。そうした外部環境に対して、受け身ではなく、自ら働きかけて環境そのものをつくり出す人材が求められている。こうした状況下、欧米では、アメリカのイリノイ工科大学やパーソンズ美術大学、フィンランドのアールト大学のような、デザインとビジネスの垣根を越えた人材を育成する高等教育機関の重要性が高まっている」。
TCLが対象とするのは、大学または短期大学の卒業者ならびに、同等以上の学力があると認められた者。具体例としては、企業の経営を担う人材やその候補者、経営企画や新規事業開発部門の人材、UI・UXが重要となるスタートアップ企業の担い手とされている。
講師陣としては永井をはじめ、多摩美術大学の教授でもあるデザイナーの深澤直人、株式会社スマイルズの遠山正道や、著述家の山口周らの名が挙げられた。履修期間は3ヶ月。毎週土曜日に6時間のカリキュラムを10週実施する。講座は東京・六本木の東京ミッドタウン・デザインハブ内にあるインターナショナル・デザイン・リエゾンセンターならびに、多摩美術大学上野毛キャンパスで実施。出願期間は11月下旬から12月、詳細なプログラムの発表は20年1月を予定している。
武蔵野美術大学が造形構想学部・大学院造形構想研究科を2019年度から設置するなど、美術系大学で盛んになるデザインとビジネスの統合を目指したプログラム。今後の展開に注目したい。