青森県が主催し、エヌ・アンド・エー株式会社が企画制作をおこなう、青森をアートでたどるプロジェクト、原高史「AOMORI MAPPINK MEMORY 『記憶の未来』」が、9月14日にスタートした。弘前れんが倉庫美術館を起点とし、弘南鉄道弘南線の車両、および主要駅(弘前駅・平賀駅・黒石駅)、JR弘前駅 津軽ラウンジで11月13日まで開催される。
原は、東京都出身のアーティストで、東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科教授。90年代後半より、インスタレーションやプロジェクト、絵画作品などを美術館で発表してきた。主な活動に、地域の人々とのコミュニケーションを通じて得られた「ことば」を絵とともにパネルに描き、歴史的建物や地域一帯の窓をピンクで埋め尽くすプロジェクト「Signs of Memory」がある。
本企画は、弘南線沿線をアートを通じて巡ることで、地域の魅力を再発見し、さらなる滞在をうながすというもの。原は、鮮やかなピンク色をテーマカラーに、弘南鉄道弘南線の1車両を過去と未来をつなぐタイムマシンに見立て、ピンク色のアート列車「MAPPINK TIME MACHINE」を制作した。
列車は2両編成で運行されており、1両目は原のMAPPINK TIME MACHINEが、2両目は青森県立黒石高等学校情報デザイン科(担当教員:菊谷哲先生)の学生9名と原によるワークショップの成果展「弘南鉄道沿線風景2022 高校生による『記憶の未来』」が車内で展示されている。
また、本企画と連動して弘前れんが倉庫美術館や駅舎はピンク色に彩られ、地域に暮らす27名の人々へインタビューを実施した映像が美術館や駅舎などで上映されている。これらは、地域の歴史をたどり、そこに暮らす人々が紡ぎ出した土地の過去と未来をつなぐ言葉を、映像作品として再構成したものだ。
弘前れんが倉庫美術館の窓には、原が地域の人々とのコミュニケーションから得た「未来に託したい言葉」をもとに制作した絵画作品を展示。2階の市民ギャラリーではインタビュー映像が上映されている。夜にはテーマカラーのピンク色でのライトアップも予定されており、美術館の外観に薄らピンク色が映し出されるという。
弘南鉄道弘南線「平賀駅」「黒石駅」とJR弘前駅「津軽ラウンジ」でも「MAPPINK STATION」と称して、インタビュー映像を上映。そこで聞くことができる弘前市、黒石市、平川市、田舎館村で暮らす、働く人々よる言葉は、未来を生きるための手がかりにもなり得るだろう。
この企画について原は以下のように述べた。「青森に住む人々への取材を重ねるうちに、自分自身がその人間力に魅了されてしまった。今回の企画でテーマカラーのピンク色は自然と決まっていたものだが、その人間力を表すような色でもある。様々な方へのインタビューをへて、自分の将来を考えるきっかけにもなった。アート列車や各所のインタビュー映像を通じてぜひ皆さんも青森の魅力を体感してほしい」。
なお、アート列車への乗車や周辺エリアへの周遊観光に最適なピンク色の一日乗車券「MAPPINK TICKET」と特別冊子「MAPPINK BOOK」がセットになった「わのパス MAPPINK TICKET」も販売されている。アートを通じてより青森の魅力に迫りたい方は、ぜひこのガイドブックも活用してほしい。