第23回写真「1_WALL」でグランプリを受賞した木原千裕。その副賞としての個展「Wonderful Circuit」が、5月24日〜6月25日の会期で東京・銀座にあるガーディアン・ガーデンで開催される。
木原は1985年福岡県生まれ。同志社大学社会学部教育文化学科卒業。これまでは塩竈フォトフェスティバル写真賞 特別賞(2018)や第1回ふげん社写真賞 グランプリ(2021)などを受賞してきた。
第23回写真「1_WALL」グランプリを受賞したのは、恋人の僧侶との関係を彼女が所属する寺から拒絶された出来事をベースにした「Circuit」。審査員からは、作品が扱う問題の多様性や、到達困難な海外の聖地へ向かい撮影する行動力とそれによりテーマを深めたことが高く評価された。
寺に拒絶された葛藤から信仰による救いとは何か、人間の尊厳とは何かについて考えつつ、巡礼の旅を通して、また写真と向き合うことで自身を発見していったという木原。本展では、恋人であった僧侶を被写体とした作品や、寺の法要風景、仏教を含む多数の宗教で聖地とされる、チベット西部に位置するカイラス山の巡礼路で撮影した写真、地元福岡を撮影した作品などを展示する。
本展に際して、木原はステートメントで次のような言葉を寄せている。
少し先を歩いていたあの女性が熱心に祈りを捧げている。仏教徒だったのか、と今このとき理解した。吹雪の中、標高5000mに達しようとするこの場所で両手と額を何度も地面にこすりつけている。欧米から来ているのであろうこの女性とは初日の宿で同室となった。私に英語力がないことがわかるや否や、彼女は口元をチャックするジェスチャーをし、私の言葉を遮った。驚き、それが何を意味するか理解したあとにはじわりと心を刺していた。旅の間中彼女を遠ざけたのはこの出来事があったからだ。しかし今、目の前に現れた篤い信仰心に、肯定への希求とこれまでの過去の出来事が脳裏に激しく流れ出していた。
なお6月6日には、写真家の津田直をゲストに迎え、トークイベントが開催される。受賞から約1年を経て、木原の制作活動の現在形をぜひ現地で確かめてほしい。