グラフィックから絵画まで、多彩な作品で知られるアーティスト・横尾忠則。その肖像画にフォーカスした個展「横尾忠則:The Artists」を、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で見ることができる。会期は7月21日〜10月17日。
1960年代初頭よりグラフィック・デザイナーやイラストレーターとして活動を開始した横尾は、80年代に「画家宣言」により画家・芸術家へと活動領域を移した。本展に並ぶのは、フランス・パリにあるカルティエ現代美術財団が横尾に制作を依頼した、様々なジャンルのアーティスト・ポートレート139点(うち新作7点)だ。
カルティエ現代美術財団とは1984年にカルティエによって創設された財団であり、長年にわたり科学、映画、ダンス、デザインなど多岐にわたるテーマで現代美術展を企画。50ヶ国500人のアーティストによる2000点以上のコレクションを有している文化機関として世界的に知られている。
日本との関わりも深く、これまで森村泰昌、荒木経惟、宮島達男、村上隆、森山大道、杉本博司、川内倫子、横尾忠則、束芋といった14名の日本人アーティストの展覧会を開催するなど、日本のカルチャーやアートシーンを世界に発信する中心的役割を担ってきた。
今回日本で初披露された肖像画群は、カルティエ現代美術財団が財団設立30周年を機に横尾に依頼したもので、横尾は3ヶ月間にわたってこの肖像画制作に取り組み、美術、映画、音楽、ファッションなど、じつに多様なジャンルのアーティストたちを描いた。作品はすべて油彩で、キャンバスサイズは33cm×24cm。この限られたフォーマットのなかで、横尾のクリエイションはいかんなく発揮されている。
例えば、7月14日にこの世を去ったクリスチャン・ボルタンスキー。画面いっぱいに描かれた顔と柔らかな表情は、本展でもひときわ目を引くものだ。
村上隆は、黄色と青という極めてシンプルな色彩によって表現され、新作のダミアン・ハーストは、荒々しい筆致で描かれた。こうして見てみると、いずれの作品も絵画とグラフィックの要素が融合していることに気づくだろう。
本展では、こうした肖像画群に連続性をもたせるように、リボンのような帯状に作品を展示。肖像画同士の並びから、それぞれの関係性を自由に連想できる展示構成となっていることにも注目したい。
なお、会場には映像作家・岡本憲昭が本展のために制作した横尾のインタビュー映像も展示。横尾の肖像画の世界に浸りたい。