生と愛、死の本質を考え直す。野村佐紀子の公立美術館での初個展「“GO WEST”」が碧南市藤井達吉現代美術館で開催

男性のヌード写真を手がけ、その室内空間での姿をとらえる写真家・野村佐紀子にとって、初となる公立美術館での個展「“GO WEST”」が、12月21日〜2020年2月24日に愛知県の碧南市藤井達吉現代美術館で開催される。幼少期の野村が「西の空」に想像したもうひとつの場所に向かって、写真を通して巡ってゆくという内容。過去の代表作や本展のために碧南で撮り下ろした新作など、約290点の作品を展示する。

 

Photo by Sakiko Nomura

 荒木経惟に師事し、人物や男性のヌードを静謐な表現手法で撮影してきた写真家・野村佐紀子。その美術館での初個展「“GO WEST”」が、12月21日より愛知県の碧南市藤井達吉現代美術館で開催される。

 野村は1967年山口県下関生まれ。91年に九州産業大学芸術学部写真学科を卒業し、93年より国内外で写真集を発表。これまで、日本、ドイツ、イタリア、ポーランド、フランス、デンマーク、オランダなど、世界各地で個展やグループ展を開催してきた。その作品は、東京都写真美術館やテート・モダン、サンフランシスコ近代美術館などに収集されている。

野村佐紀子

 本展のタイトルは、アメリカの西部開拓時代を象徴する言葉であり、サンフランシスコをゲイ解放のユートピアとみなしたスローガンでもある。本展は、野村の写真を通し、「西へと巡ってゆく」という展示構成。故郷の山口を起点に、台湾、中国・ハルピン、インド、パリ、スペイン・グラナダなど旅先で撮影された写真や、本展のために碧南で制作した新作を含む、約290点の作品を展示する。

Photo by Sakiko Nomura
Photo by Sakiko Nomura

 日本近代工芸の先駆者・藤井達吉の顕彰を活動の柱とする同館は漁師町にあり、周囲には宗派の異なる10の寺が建つ。野村はそれらの寺でも撮影を試み、タイトルと呼応する西方浄土をイメージした新作も発表。漆黒のモノトーンの色彩を基調とする作品では、死と隣り合う人の生の儚さを暗示し、生の実相や愛の本質について再考させる。

Photo by Sakiko Nomura

 また本展にあわせて、野村が碧南で取材した宗教哲学者の故・清沢満之の人と思想についてのレクチャーをはじめ、アーティスト・トーク、ワークショップ、ギャラリー・トークなど、様々なイベントが開催される。野村の新作を収録した写真集『野村佐紀子 “GO WEST”』も刊行予定だ。

 なお、本展の終了をもって同館は施設増築のため、1年半の休館に入る予定。それを前に、野村の写真による時空を超えた旅を体験してほしい。

編集部

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