マチュー・ブレイジーが手がけるイタリアのラグジュアリーブランド「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」が、麻布台ヒルズに新ストアをオープンさせた。
プライベートサロンを備えたこのストアは、デザインもマチュー・ブレイジーによるもの。素材や見た目の美しさなどにおいて、日本とイタリアのクラフトへのオマージュが捧げられている。特徴的な有機的な曲線は、地中海のモダニズム建築から着想を得たものであり、弧を描く壁やアルコーブ、コーナースペースなどはすべて白い漆喰によって仕上げられた。これに対して、棚やハンギングレール、キャビネット、テーブルなどはチーク材が使用されており、空間に、温かみを与えている。
またモザイク調のフロアは、ボッテガ・ヴェネタのルーツでもあり、いまも職人たちの工房がある北イタリア・ヴェネト地方で流行したパッラーディオ様式の床材をアレンジしたものだ。
この新ストアでは、ブランドが追求するクラフトマンシップへの強いリスペクトも感じられる。その代表例が、アーティスト・三嶋りつ惠による作品だろう。
三嶋は89年にイタリア・ヴェネチアに移住し、96年よりムラーノ島のガラス工房に通って職人と共同で制作。制作の過程でわき上がるインスピレーションからかたちづくられる作品は、ヴェネチアン・ガラスの特性を生かしつつ「透明さ」にこだわり、光や水、空間との関係性を重視したフォルムが特徴だ。2011年より住まいを京都に移し、いまは日本とヴェネチアを往来して精力的な活動を見せている。
ストアでは、三嶋はこのために制作した、750個のガラスの花をあしらったミラーが大きな存在感を放つ。またガラスのドアノブや棚に用いられた角柱も三嶋による作品。三嶋のヴェネチアン・ガラスが、日本とイタリアの新たなつながりを提示している。
類い稀なクラフトマンシップによって生み出されるボッテガ・ヴェネタにプロダクトの数々とともに、三嶋作品に注目してほしい。