群馬県の朝鮮人追悼碑の強制撤去に反対。アーティスト有志が要望書を群馬県に提出

群馬・高崎市の公園「群馬の森」の朝鮮人追悼碑が県により強制撤去されることに対して、ゆかりのあるアーティスト有志が要望書を作成。賛同者を募り県に提出した。

 群馬県立近代美術館や群馬県立博物館が位置する、群馬・高崎市の公園「群馬の森」。本公園にある朝鮮人労働者を慰霊する追悼碑が、県による強制代執行により撤去されることに対して、朝鮮人追悼碑存続をのぞむアーティスト有志(飯山由貴・滝あさこ)が呼びかけ人となり、要望書「群馬の森 朝鮮人追悼碑『記憶 反省そして友好』を残して下さい」を作成。賛同者を募り、26日に群馬県の山本一太知事と都市整備課の金井亘課長に宛てて提出した。     

 本追悼碑は2004年に市民団体が10年間の設置許可を得て設置。しかしながら政治的主張を行わないという設置条件に反したとして、2014年、県は設置許可を更新を拒否した。これをめぐっては、市民団体が不許可取り消しのための訴訟を起こしていたが、高裁判決では市民団体の請求を棄却する判決となり、さらに最高裁が市民団体の上告を棄却したため、訴えが退けられた。上記の判決結果を受けて、県は代執行として追悼碑を撤去する方針を固めた。

 今回、アーティストたちが提出する要望書「群馬の森 朝鮮人追悼碑『記憶 反省そして友好』を残して下さい」は、この代執行の中止と設置の継続を求めるものだ。「追悼碑の撤去は公共の利益に反し、実行すれば二度と回復ができない不可逆的な行為」としたうえで「撤去ありきの県の姿勢は、ヘイトスピーチ指定団体の活動を活発化させることに他なりません。県は『強制連行』はなかったとする人々の恣意性と政治的意図を理解」すべきと訴えている。

 本追悼碑に関しては、2015年に同県を拠点とするアーティストの白川昌生が碑をモチーフに作品を制作。群馬県立近代美術館の「群馬の美術2017─地域社会における現代美術の居場所」において展示される予定だったが、開幕直前になって美術館側がこれを取り消している。要望書ではこのときの撤去に関しての政治的介入についても抗議している。

白川昌生 群馬県朝鮮人強制連行追悼碑 2015 写真提供=白川昌生

 さらに要望書では「本追悼碑の存在が論争の対象で、街宣活動や抗議活動といった紛争の原因となるため市民公園にふさわしくない」という県の主張について「社会に暮らす在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)の人々への差別に基づく歴史の否定」が原因であり、碑の存在が原因ではないと反論。「植民地主義の歴史を学ぶ公的なミュージアムがない日本社会では、地域に残された追悼碑や慰霊碑は、植民地支配とアジア太平洋戦争時の加害の歴史を知り、学ぶための重要な礎です」としている。

 加えて、今回の行政代執行が、日本国憲法第二十一条において保障される「表現の自由」への重大な侵害だと指摘。政治的発言があったという判断も、市民による表現の自由に対して圧力をかけ、歴史的事実の継承を閉ざすものだと訴えている。

*1月29日追記 29日には公園が臨時休園とされ、閉鎖のうえで行政代執行による慰霊碑の撤去作業が開始された。

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