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2021.11.14

香港のM+がついに開館。国家安全法による制限のなか、表現の自由をどう守るのか?

アジア最大級のヴィジュアル・カルチャー博物館であり、ニューヨーク近代美術館、テート・モダン、ポンピドゥー・センターに比肩する施設と自称する香港の「M+」がついに開館した。ヘルツォーク&ド・ムーロンらが設計した建築やオープニング展、そしてアイ・ウェイウェイらによる政治的に挑発的な作品をめぐる表現の自由について、香港のアートセンター「CHAT」のエグゼクティブディレクターを務める高橋瑞木がレポートする。

文=高橋瑞木

M+の外観 Photo by Virgile Simon Bertrand © Virgile Simon Bertrand
Courtesy of Herzog & de Meuron
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 11月12日、ビクトリア・ハーバーを臨む西九龍文化区に建設された視覚芸術の博物館、M+がとうとう開館した。ニューヨーク近代美術館、ロンドンのテート・モダン、パリのポンピドゥー・センターに比肩する施設と自称するM+は、アートをめぐる学際的な議論や発表形態の多様化を背景に、伝統的なファインアートのカテゴリーに収まらない視覚文化(動画、デザイン、建築のアーカイブ資料など)をコレクションとして収蔵し、その数は6000点以上にのぼる。

 アルファベットのTの字を逆さにしたような建物のデザインは、テート・モダンを手がけたスイスの建築事務所、ヘルツォーク&ド・ムーロン(以下HdM)によるもので、香港では2018年に開館した大館(タイクン)に続いて2件目の美術館建築となる。ファサードには光の加減によって表面の釉薬が緑にも黒にも見える特注タイルが配され、低層階の外壁は規則正しく並んだ竹を想起させる仕上げになっている。ウォーターフロントに面した高層階のファサードは全面LEDモニターとして機能し、アーティストによる映像が随時上映される。巨大な建物内には合計1万7000平米の展示空間を有する33のギャラリーのほかに、ヴィデオ・アート作品を簡単に検索、鑑賞できるメディアテーク、屋上庭園、映画館、ラーニングセンター、カフェやショップ、レストランなど、来館者が様々な目的で利用できる空間が備えられている。

メインホール Photo by Kevin Mak © Kevin Mak
Courtesy of Herzog & de Meuron
2階のアトリウム Photo by Kevin Mak © Kevin Mak
Courtesy of Herzog & de Meuron
メディアテーク Photo by Kevin Mak © Kevin Mak
Courtesy of M+, Hong Kong