イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への地上侵攻が懸念されるなか、イギリスの組織「Artists for Palestine UK」(APUK)が停戦を呼びかけるオープンレターを公開。ティルダ・スウィントンやナン・ゴールディンらの俳優、アーティスト、作家、キュレーター、建築家、デザイナーなど、芸術界全体から4000近くの署名が集まっている。
10月7日、ガザ地区を支配する組織ハマスはイスラエルに奇襲攻撃を仕掛け、イスラエル側で少なくとも1300人以上が死亡し、200人以上が人質にとられたと報道されている。それに対してイスラエル軍は、報復としてガザ地区に激しい空爆を繰り返している。NHKの報道によれば22日朝からの24時間のみでガザ地区で320ヶ所以上の標的を攻撃し、現在まではガザ地区での死亡者は5000人以上にのぼっているという。
イスラエルによる軍事侵攻に対してAPUKはこの書簡のなかで、「イスラエルはガザの大部分を瓦礫と化し、230万人のパレスチナ人への水、電力、食糧、医薬品の供給を遮断した。国連の人道問題担当事務次官の言葉を借りれば、『死の恐怖』がガザを覆っているのだ」と訴えている。
APUKのウェブサイトによれば、10月24日の時点で3945人のアーティストが署名。なかには、2019年のターナー賞を受賞したタイ・シャニ、エルサレム出身でロンドンを拠点に活動しているオリート・アシェリーやラリッサ・サンスール、パレスチナ系アーティストのロザリンド・ナシャシビ、そしてフローレンス・ピーク、ジョージナ・スターなども名を連ねている。
また、アメリカの現代美術誌『Artforum』も10月19日にウェブサイトでオープンレターを公開し、イッシー・ウッド、ジェレミー・デラー、カラ・ウォーカー、ピーター・ドイグなど8000人が署名している。
このレターでは、「すべての民間人の殺害と危害の停止、即時停戦、ガザへの人道援助の通過、そして重大な人権侵害と戦争犯罪への統治機関の加担の停止」や、「暴力の根本原因である抑圧と占領を終わらせること」「芸術団体に文化労働者との連帯を示し、(中略)人道援助が妨げられずに入ることができるようにガザの横断歩道の開放を要求すること」を求めている。
いっぽうで、『Artforum』のレターに対してレヴィ・ゴーヴィ・ギャラリーの共同創設者であるドミニク・レヴィとブレット・ゴーヴィ、ルクセンブルク&ダヤン・ギャラリーの共同創設者であるアマリア・ダヤンは、同誌のウェブサイトに掲載された署名記事で反発を示し、次のように述べている。
「このオープンレターは、現在進行中の大規模な人質事件、歴史的背景、そして2023年10月7日にイスラエルで行われた残虐行為を認めていない。私たちは、イスラエルとガザにおけるあらゆる形態の暴力を糾弾し、人道的危機に深い懸念を抱いている。オープンレターの一方的な見解を非難し、複雑な問題をよりよく理解するための言論を促進することを願っている」。
こうした反発を受け、『Artforum』はオープンレターで次のように追記している。「(前略)10月7日にハマスによって行われたイスラエル人に対する凄惨な虐殺を明確に非難することなく、『アイデンティティに関係なく、すべての民間人に対する暴力』を拒否するという私たちの呼びかけが、一部の読者によって、その暴力に反発していないと理解されたことを悲しんでいる。すべての民間人の犠牲者を悼む。すべての人質の迅速な解放を望み、即時停戦を求め続ける」。