2021年9月から10月にかけて一般公開された、パリのエトワール凱旋門を布で包む故クリストとジャンヌ=クロードの大規模なプロジェクト「L’Arc de Triomphe, Wrapped(包まれた凱旋門)」。同プロジェクトが新しいかたちで“復活”する。
このプロジェクトで使用された素材が、今後パリで開催される大規模なイベント、とくに2024年のオリンピック・パラリンピックのためにリサイクル、再利用されることがパリ市によって発表された。同市と「L’Arc de Triomphe, Wrapped」プロジェクトの制作チーム、非営利の環境保護団体「Parley for the Oceans」とのパートナーシップによって実現したプロジェクトだ。
「L’Arc de Triomphe, Wrapped」プロジェクトのディレクターを務めるウラジミール・ヤヴァチェフは声明文で、次のように述べている。「クリストとジャンヌ=クロードは、彼らのプロジェクトで使用されるすべての素材の再利用、アップサイクル、リサイクルにつねに尽力してきた。私たちはいま、パートナーの協力を得て、『L’Arc de Triomphe, Wrapped』に第二の生命を与えようとしている。そして、クリストとジャンヌ=クロードの人生と作品に大きな影響を与えたパリで、この芸術作品を再利用することほど理にかなったことはないだろう」。
クリストとジャンヌ=クロードのこれまでのプロジェクトと同様、「L’Arc de Triomphe, Wrapped」の制作に使用された素材はすべて再利用、アップサイクル、リサイクルされている。その下部構造に使用された木材と鋼鉄はすでに再利用されており、2万5000平米におよぶシルバーとブルーのポリプロピレン生地と3000メートルの赤いロープは、Parley for the Oceansによって生まれ変わり、現在、新素材のデザインと生産の段階が始まっているという。
Parley for the Oceansの創設者兼CEOであるシリル・ギュッチは、クリストとジャンヌ=クロードによるこの作品は「一見不可能に見えるアイデアも、ひるまず、あきらめず、前向きで楽観的な姿勢で追い求めれば、現実になるという励まし」を示すものだとし、今回のプロジェクトについて「有害で、有毒で、搾取的なビジネス慣行が過去のものとなるような新しい経済を、ともにつくり上げることができると確信している」と語っている。
リサイクルされた素材は、2024年のオリンピック・パラリンピックをはじめとするイベントにおいて、シェードやテント、あるいは幕などに使用される予定だ。パリ市長アンヌ・イダルゴは、「これは、気候問題に適応する芸術界の能力を示す非常に素晴らしい例だ」とコメントしている。