日本を代表する音楽家として大きな足跡を残した坂本龍一が3月28日この世を去った。71歳だった。坂本龍一の公式Twitterには、灰色の背景に黒文字で生没年が刻まれた。
— ryuichi sakamoto (@ryuichisakamoto) April 2, 2023
坂本龍一は1952年東京都生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科および同大学大学院音楽研究科で学び、松本民之助に師事。大学院在籍中から編曲などの仕事に携わり始め、78年にアルバム『千のナイフ』でデビューを果たす。同年、音楽家の細野晴臣、高橋幸宏とともに、「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成(〜83年)。シンセサイザーなどの電子音楽を用いたエレクトロ・ポップを取り入れた楽曲を発表し、80年代日本の「テクノポップ」の流行につながった。
YMOでの5年間の活動を終えたのちも音楽家として精力的に活躍。83年の映画『戦場のメリークリスマス』では音楽を手がけるとともにデヴィッド・ボウイらと共演し、87年には映画『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞している。99年にオペラ『LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999』を公演。ニューヨーク在住中の2001年にアメリカ同時多発テロ事件が発生し、この体験を機に、平和や社会問題への言及を強めていった。また森林保全を目的に「一般社団法人more trees」(2007年〜)を設立するなど、積極的な環境活動でも知られている。
美術分野とのつながりも強く、2014年には初回の「札幌国際芸術祭」のディレクターに就任。しかしながら同芸術祭開幕直前で中咽頭がんの治療に専念することを公表した。復帰後の17年には前作から8年ぶりとなるアルバム『async』を発表し、同年にワタリウム美術館(東京)では「坂本龍一 acync 設置音楽展」が開催されている。
20年6月にはふたたびがんが見つかり、以降、坂本は闘病と創作活動を並行して行ってきた。22年12月にはピアノ・ソロ・コンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022」を配信。無観客の事前収録で「戦場のメリークリスマス」のテーマ曲やYMOの楽曲を熱演したことは記憶に新しい。また近年ではダムタイプにも加わり、23年1月には、『async』以来となるニューアルバム『12』を発表したばかりだった。
坂本龍一の公式サイトでは、声明文のなかでファンや医療関係者への感謝の言葉とともに、坂本龍一が好きだったという一節が引用されている。
“Ars longa, vita brevis.”
Art is long, life is short.