ナン・ゴールディンの人生に迫るドキュメンタリー映画がアカデミー賞にノミネート

アメリカの写真家であり活動家としても知られているナン・ゴールディンの人生を追うドキュメンタリー映画『All the Beauty and the Bloodshed』(2022)が、第95回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

『All the Beauty and the Bloodshed』(2022)のポスター 出典=NEONのウェブサイトより

 アメリカの写真家であり、同国で大きな問題となっているオピオイド中毒問題の事態改善を訴える活動でも知られているナン・ゴールディン。その人生や活動を追うドキュメンタリー映画『All the Beauty and the Bloodshed』(2022)が、第95回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

 ゴールディンは、1970年代よりLGBTの友人たちや、世界を席巻したHIV/AIDSの危機を記録した写真家として知られている。いっぽうで、自身のオピオイド中毒の経験を受けて「P.A.I.N.」(Prescription Addiction Intervention Now)という団体を設立し、オピオイドの普及のきっかけをつくったサックラー一族から寄付を受けていたメトロポリタン美術館などの美術館で抗議活動を行うことにより、各国の美術館が相次いでサックラーとの関係を解消したことでも近年は大きく注目を集めている。

 アカデミー賞受賞の映画監督であるローラ・ポイトラスが監督し、ゴールディンが共同でプロデュースした同作は7つの章で構成。各章はゴールディンの人生の様々な時期の写真代表作やアーカイブ映像から始まり、メトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館、ルーヴル美術館などでのP.A.I.N.による抗議活動の映像へと移り変わる。

 また、同作は昨年9月に第79回ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、金獅子賞を受賞。同映画祭での最高賞を受賞した2番目のドキュメンタリーとなった。

 ヴェネチア国際映画祭での上映にあたり、ポイトラス監督は次のようなステートメントを寄せている。

 「私はまず、億万長者一家が故意に過剰摂取を引き起こし、税金控除と命名ギャラリーと引き換えに美術館に資金を流すという、現代の恐ろしい物語に引き込まれた。しかし、話をするうちに、これは私が語りたい物語の一部でしかなく、この映画の核はナンの芸術、写真、そして彼女の友人や妹バーバラのレガシーであることに気づいたのだ」。

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