松江出身の実業家であった新庄二郎(1901~96)旧蔵の「新庄コレクション」、津和野出身の北斎研究者・永田生慈氏(1951~2018)旧蔵の「永田コレクション」というふたつの優れた個人コレクションを中心に、約3000点の浮世絵を所蔵する島根県立美術館。
この浮世絵コレクションの魅力を、各コレクションの概要や代表作の紹介、様々な特集を通じて紹介するウェブサイト「島根県立美術館の浮世絵コレクション」が開設された。
同サイトは、新型コロナウイルスの影響で来館できない人に向けて、また同館の改修工事に伴う休館期間(5月25日~2022年5月、予定)には実際の浮世絵鑑賞ができなくなることから立ち上げられたもの。コロナ禍での新たな美術品の楽しみ方を提案する。
北斎・広重の風景版画を中心とする「新庄コレクション」の総数は471件にのぼり、摺りや保存状態が良好な作品が多い。例えば北斎の代表作《冨嶽三十六景 凱風快晴》は、1970年の大阪万博に際して開催された「万国博美術展」に浮世絵を代表して展示された名品だ。
「永田コレクション」は総数2398件を数え、北斎20歳のデビュー作から、90歳で亡くなった朝の死亡通知まで、各年代における様々な分野・画題の作品を収めている。保存状態の良い初摺の逸品や世界に1点しかない貴重な作品資料も多く、北斎に特化した個人コレクションとしては世界屈指の規模を誇る。
また、島根県立博物館(2007年閉館)が所蔵していた「新庄コレクション」を受け継いだ同館は「日本の版画」を収集方針のひとつに定めている。サイトでは上記のふたつに加え、北斎と広重の風景版画の収集に務めてきた「島根県購入分」も見ることができる。
現在は初回の特集として「島根県立美術館の浮世絵コレクション100選」が公開中。新たに撮影された美しい画像で、珠玉のコレクションを楽しむことができる。なお、特集ページは今後も随時追加される予定だ。
なお、美術館がオンラインコンテンツとして所蔵品を公開する動きは進んでおり、福岡県立美術館は3月29日に同館初の取り組みとして「福岡県立バーチャル美術館」を公開している。