第3回「Tokyo Contemporary Art Award」、受賞者は竹内公太と志賀理江子に決定

3回目の開催を迎える 「Tokyo Contemporary Art Award」の受賞者に、竹内公太と志賀理江子が選出された。

竹内公太 盲目の爆弾、コウモリの方法 2019-20 映像、32分

 東京を文化の面から盛り上げるために多彩な文化プログラムを展開する「Tokyo Tokyo FESTIVAL」。その一環として2018年度から行われている「Tokyo Contemporary Art Award」(以下TCAA)は、中堅アーティストを対象に、海外展開も含めたさらなる飛躍を促すための現代美術の賞だ。

 第3回となる「TCAA2021-2023」では、新たにソフィア・ヘルナンデス・チョン・クイ(旧称ヴィッテ・デ・ヴィット現代美術センターディレクター)、高橋瑞木(CHAT[Centre for Heritage, Arts and Textile]エグゼクティブディレクター兼チーフキュレーター)、鷲田めるろ(十和田市現代美術館館長)が選考委員として参加。計6名による審査を経て、写真家・志賀理江子と、アーティストの竹内公太が選出された。

 「安全・清潔・便利な住環境に育った私とカメラ機器の親和性は、その暴力性においてきわめて高かった」と述べる志賀。08年から宮城県に移住し、その地に暮らす人々と出会いながら、人間社会と自然のかかわりや、死の想像力から生を思考すること、何代にも溯る記憶などを題材に制作を続けてきた。近作では、11年に起きた東日本大震災での沿岸部における社会機能喪失や、厳格な自然法則の体験を、戦後日本のデジャヴュのような「復興」に圧倒されるという経験に結びつけながら、人間精神の根源を追及する試みを見せた。

 いっぽう福島県に生活と活動の拠点を置く竹内は、東京電力福島第一原発のライブカメラを指差した「指差し作業員」の代理人として、作品の編集・展示を代行している。パラレルな身体と憑依をテーマに、時間的・空間的隔たりを越えた活動を通じてメディアと人間の関係を探り、鑑賞者に作家自身との疑似的な共有経験を提供するようなスタイルだ。

 2名の受賞にあたって、選考委員長のキャロル・インハ・ルー(北京インサイドアウト美術館ディレクター)は、次のようにコメントしている。

 今年の選考は、新型コロナウィルス感染症が長期化する中、移動が大幅に制限されたことで、例年以上に難しいものとなった。選考委員の大半は、実際にアーティストのスタジオに行くことができなかった分、オンライン上でのスタジオ訪問やプレゼンテーションに頼る部分が大きかった。TCAA の素晴らしいチームワークと、アーティストたちの辛抱強さと献身的な努力のおかげで、アーティスト各々の活動について、非常に幅広くそして深く調査することができた。  当初からこの賞に関わってきた選考委員と新たな選考委員とが混在する中、選考前の話し合いや最終選考では、非常に活発で建設的な議論ができた。この賞がこれまでどのような位置付けで、どのように組み立てられてきたのか、また今後どのように進めていくかについて反省点や検討すべき点が見つかったが、選考会では、アーティスト一人ひとりについて丁寧に議論することができ、それぞれの意見を互いに思う存分伝え合うことができたと思う。その結果、じっくりと十分な議論を重ねた上での最終決定となった。  今、グローバル化は難題となり再検討される過酷な時期を迎えている。その中でも、TCAA はアーティストがより大きなアートの世界のさまざまな場面に少しでも多くつながることができるように、最大限の努力を続けている。更なる成長を目指して活動を続けているアーティストたちを支援するこの賞は、近い将来きっと実を結ぶだろう。選考委員として、前向きで未来を見据えたこのような素晴らしい取り組みに参加できたことを、大変光栄に思う。

 受賞記念シンポジウムは、3月21日に東京都現代美術館で開催。オンラインでの配信も予定されている。詳細は、TCAAの公式ウェブサイトを参照してほしい。

志賀理江子 人間の春・昨日と変わらない今日、今日と変わらない明日 2019 Cタイププリント 「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館、2019)
竹内公太 文書1: 王冠と身体 2020 インスタレーション、紙にレーザープリント

編集部

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