バイデン新大統領の誕生に湧くアメリカ。このアメリカ大統領には、伝統的な慣習があることをご存知だろうか? それは肖像画だ。
アメリカでは初代大統領のジョージ・ワシントン以来、歴代大統領の肖像画が残されており、ナショナル・ポートレート・ギャラリーが所蔵している。肖像画は任期中に描かれることもあれば、退任後に描かれることもあるが、現職大統領の最初の任期中に前大統領の肖像画の除幕式を行うのが慣例となっている。
この肖像画で注目したいのが、各大統領の特徴を表す肖像画家の選定だ。ジョージ・ワシントンは、アメリカ最初期の肖像画家と考えられるケヒンデ・ワイリーがその姿を描いた。以降、長きに渡って伝統的な肖像画のスタイルが続きてきたが、大きな変化が起こったのは第35代大統領ジョン・F・ケネディのとき。
それまでの肖像画とは異なり、背景は抽象画のように色彩で覆われ、ケネディの姿も背景に同化するような力強い筆致で描かれている。描いたのはエレイン・デ・クーニング。抽象表現主義の作家として知られるウィレム・デ・クーニングの妻であり、自身も抽象表現主義の作家として活動した女性だ。エレイン・デ・クーニングは1962年12月と1963年1月、フロリダ州パームビーチでケネディと非公式なセッションを何度か行い、その後10ヶ月のあいだに何十枚ものドローイングや絵画を制作したという。
ケネディ以降はまた伝統的な肖像画に戻るが、第42代大統領ビル・クリントンはケネディ同様にこれまでの伝統を覆すような肖像画を残した。作者は、グリッドシステムを用いて写真から得られる視覚的な情報を抽象化する現代アーティストのチャック・クロースだ。クロースは、ニューヨークの雑誌の表紙を飾るために撮影した写真を元に、この肖像画を制作した(なおクロースはその後の2018年に複数の女性に対するセクシャル・ハラスメントを行っていたことが明らかになった)。
近年では、バラク・オバマの肖像画が話題を集めたことは記憶に新しい。オバマの肖像画を描いたのはケヒンデ・ワイリー。アメリカ歴代大統領の肖像画家としては、初のアフリカ系アメリカ人の画家だ。
鮮やかな植物を背景に座るオバマ。背景に描かれた菊はシカゴの公式の花を意味しており、ジャスミンはオバマが幼少期の大半を過ごしたハワイを連想させるものだ。
こうした特徴的な肖像画を残してきた大統領はいずれも民主党。退任したばかりのトランプ前大統領の肖像画がどうなるかは現時点で不明だが、共和党の大統領は伝統的な肖像画となる傾向がある。
なお、カマラ・ハリス副大統領については、サンフランシスコ在住の14歳の少年タイラー・ゴードンがその肖像画をタイムラプス動画で配信し、話題を集めた。バイデン新大統領の肖像画がお披露目されるのは当分先の話ではあるが、その行方が気になるところだ。
@KamalaHarris My name is Tyler Gordon and I'm 14 years old and I live in the Bay Area! I painted this picture of you and I hope you like it!!! Please Rt and tag her so that she can see this. Please!!!@JoeBiden @DouglasEmhoff @SenKamalaHarris @WeGotGame2 pic.twitter.com/X0qtChKBf2
— Tyler Gordon (@tygordonsworld) November 23, 2020