高さ約7.8メートルという奈良美智の巨大な屋外彫刻作品《Miss Forest(LACMA Version)》(2020)が、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)の永久コレクションに収蔵された。
同館は今年4月、奈良の大規模な回顧展を開催予定となっていたが、新型コロナウイルスの影響で3月中旬より休館が続いており、作品の設置が完了したものの、展覧会は未だ開幕していない。今回の作品は、奈良の「Miss Forest」シリーズの最新作であり、同展のために制作されたもの。匿名のコレクターによって寄贈されたという。
展覧会のキュレーションを手がけた吉竹美香とのインタビューで、奈良は同シリーズについてこう語っている。「日本語では『森の子』と呼ばれています。最初は大きな塊をつくっていたのですが、だんだんタネンバウムのように植物のかたちをした作品をつくるようになりました(原文は英語)」。
東日本大震災後、奈良は粘土を手で成形するプロセスにインスピレーションを受け、そのアイデアをもとにしたブロンズ作品を制作し始めた。2012年には、常緑樹の円錐形の先端に髪の毛が立ち上がる少女の頭をモチーフにした《Miss Tannen》(2012)を発表し、このキャラクターをモデルに、16年よりはブロンズ彫刻シリーズ「Miss Forest」を展開している。
「作品ができあがっていく過程のなかで、私が思い描いていたイメージは、大地から生まれ、空や宇宙に向かって成長し、それによってアンテナのように宇宙と交信しているものでした。それは、私たちが足を置く壮大な大地と、手の届かない空とのあいだの触媒のようなものです。単純に作品というよりも、そういう存在感がある。先住民族の人たちが空とコミュニケーションをとるために高いところに登って祈りを捧げることを思い浮かべます。それと似たようなものが自分のなかにあるような気がします。だからこそ、この作品が生まれたのだと思います(原文は英語)」。
なお、LACMAはこのほかにも奈良の作品を永久コレクションとして収蔵しており、2005年にアイリーン&ピーター・ノートン夫妻に贈られた野外彫刻《Black Dog》(1999)と、サリー&ラルフ・タウィル夫妻による資金で購入した絵画《Girl from North Country》(2017)がある。