老朽化対策などのため、2017年6月から施設の全面的な建替えに取り組んでいた大阪の藤田美術館が、その新たな姿を公開した。
同館は、明治時代の実業家・藤田傳三郎と、息子の平太郎、徳次郎によって築かれたコレクションを軸にした1954年開館の私設美術館。《曜変天目茶碗》をはじめとする国宝9件をはじめ、重要文化財53件を含む約2000件のコレクションを有する美術館として知られている。
開館から17年までは、明治〜大正時代に建造された藤田家邸宅の蔵を改装し、展示室として再利用していたが、展示棟や事務所棟などの老朽化対策が課題となっていた。
そこで同館は、コレクションの一部である中国美術の作品をクリスティーズにて譲渡。その資金によって美術館の建替えを実施した。新たな美術館は、開放的なガラスのファサードが印象的なデザインだ。
茶店が隣接する特徴的な広い土間には蔵の扉が設置され、その奥には雰囲気の異なる展示空間が広がっている。旧館の部材を多数使用するなど、藤田美術館の半世紀以上の歴史を感じさせつつ、現代建築として生まれ変わった。
美術品の展示公開は2022年春。それに先駆け、21年4月には茶店や日本庭園が開放される。日本美術の殿堂である藤田美術館の新たな姿が待ち遠しい。