都市に関する学術研究に対する助成をメインに行う公益財団法人大林財団によって設立された「大林賞」。その第11回の受賞者が、現代アーティストのオラファー・エリアソンに決定した。
同賞は、都市が抱える諸問題の解決に多大な功績があった研究者や、都市のあり方や将来像に指標を与え、あるいはそれらを実践することによって社会に大きく貢献をした者を顕彰するもの。2000年に設立されて以来、2年ごとに実施されている。
これまでイギリスの彫刻家アントニ-・ゴ-ムリ-やコロンビアの建築家アレハンドロ・エチェベリ、アメリカのランドスケープ・アーキテクトであるキャサリン・グスタフソンなどが受賞してきた。受賞者には、賞金500万円が授与される。
今回の授賞理由について、大林財団は声明文で次のようにコメントしている。「アートやデザインには世の中を変革する力があるとの信念のもと、世の人々に対して意識変革の体験をもたらすことによって、環境や貧困といった都市が抱える喫緊の課題解決に向けて、人々を実際の行動へと促してきたこれまでの制作活動や発言が高く評価されたことによるものです」。
エリアソンは1967年デンマーク・コペンハーゲン生まれ。彫刻、絵画、写真、映像、インスタレーションなどを通し、美術館やギャラリー内にとどまらず、建築プロジェクト、市民空間への介入、芸術教育、施策の提案、持続可能性や気候変動の問題など、幅広い公共圏と関わりを持ちながら多岐に渡る作品を制作。現在、コペンハーゲンとベルリンを拠点に活動しており、9月27日までは東京都現代美術館でその最新の個展「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を開催している。
今回の受賞について、エリアソンは次のように語っている。「大林賞をいただくということは、『芸術は変化を起こすことができる』と認めていただくことであり、大変光栄に思います。私は自身の作品において都市・公共空間を議論の場として捉え、人々が能動的に社会に関わること、またその先には共通の未来について考えることを見据えながら活動しています」。
また、日本との関係性について、エリアソンはこう続ける。「過去20年のあいだ、日本とは親密な関係を築いてきました。日本の文化・伝統や思いやりの心には、いつも多くのことに気づかされます。現在、物理的には離れ離れになってしまっている我々ですが、私の想いはつねに人々とともにあり、これからも決して止まることのない対話を続けていくことを、心から楽しみにしています」。
なお、例年、大林賞は受賞者を招待して授賞式や受賞記念講演・シンポジウムを実施しているが、今回は、今後の新型コロナウィルス感染状況を考慮して実施可否の判断を予定している。