新型コロナウイルスの影響により、大きな影響を受けているアート・マーケット。ギャラリーが休廊を余儀なくされ、アートフェアの延期や中止が相次いでいるが、オークションハウスも例外ではない。国内大手のアートオークションハウスである、SBIアートオークション・マネージャーの加賀美令と、毎日オークション・管理部の池田孝樹に、現状と今後の展望について話を聞いた。
SBIアートオークションは、4月26日に予定していた「第37回近現代美術オークション」を、7月のオークションと統合して6月19、20日に延期。この影響について、加賀美は以下のようにコメントした。
「オークションを統合したことにより、単純に1回分のセールがなくなっている。延期した6月のオークションの下限合計値は4億9671万円となっており、昨年4月のオークション下限合計値は約4億4720万円(出来高は7億184万円)、7月のオークションの下限値は約3億1430万円(出来高5億851万円)であったため、今年上半期に開催するオークションの下限合計値は、前年比でみると約65パーセント程度となっている。また、落札率や下限からの伸び率が前年より上がるということは想定しづらいため、落札ベースでみた場合に前年比の50パーセントを下回る可能性もあると想定している。延期した6月のオークションも予定通り開催できるかどうか確約ができていない。落札結果次第では、経済的損失も変わってくるだろう」。
いっぽうでSBIオークションは、今後もイベント自粛が続くことも想定。詳細はまだ公開できないとしながらも、新しい試みを企画中だという。
毎日オークション管理部の池田孝樹も「前年比などの具体的な数値に関してはもう少し先にならないとわからないが、大きな打撃であることは間違いない」としている。4月以降に予定されていたオークションの開催が順延となったことに加え、経済活動が止まることで先の出品も得られない可能性が高いため「緊急事態宣言が解除されたとしてもその影響は長期にわたる」と予測する。
毎日オークションは、5月15、16日の「637回絵画・版画・彫刻オークション」より、感染対策を万全にしたうえでオークションの開催を再開する予定だ。会場では徹底した衛生管理をするとともに、ウェブ入札、書面による委託入札、電話での参加を推奨している。
しかしながら、オークションの開催されたとしても、関係者が懸念するように作品出品の渋りや、経済状況の変化によるオークション参加者の減少の可能性は高い。これまでも電話やオンラインなど現地に足を運ばないかたちでの入札方式も用意してきた各オークションだが、下見会で現物を見る体験や、オークション会場でのコミュニケーションなどの代替方法も含めて、柔軟な施策が求められる。