芸術文化振興会を提訴。映画『宮本から君へ』助成金不交付で

文化庁所管の芸術文化振興会が、映画『宮本から君へ』に対する助成金1000万円を不交付とした件で、行政処分の取り消しを求める提訴後の記者会見が、同作のエグゼクティブプロデューサーと弁護団により行われた。

 

芸術文化振興会を提訴した原告と弁護団。左から2人目が河村光庸

 文化庁所管の独立行政法人日本芸術文化振興会(以下、芸文振)が、助成金交付が内定していた映画『宮本から君へ』への助成金1000万円の不交付を決定した件について、同作エグゼクティブプロデューサーで株式会社スターサンズ代表取締役の河村光庸と弁護団が記者会見を行った。

 この問題は、芸文振によって内定を出されていた助成金の交付が、出演者のひとりであるピエール瀧がコカインの使用・所持で有罪判決を受けたことを理由に、「公益性の観点から」不交付とされたもの。

 映画が完成したのは2019年3月12日で、同日にピエール瀧が麻薬取締法違反で逮捕。同29日に芸文振から内定通知が出されたものの、6月18日にピエール瀧に有罪判決が下されると、芸文振は同28日に助成金不交付決定を口頭で告知。7月10日には不交付が決定された。

 弁護団によると、芸文振が内定を出した後に不交付とする事例はこれまでにはないという。なお芸文振は9月27日付で助成金交付要綱を改訂し、取り消し事由として「公益性の観点から不適当と認められた場合」という文言を追加している。

改訂された芸術文化振興会の要綱

 原告は、今回の芸文振の決定について、憲法第21条で規定されている「表現の自由」の侵害などとし、補助金適正化法6条1項違反として、助成金不交付決定の取り消しを求める訴訟を提起。12月20日に受理された。

 河村は、不交付について「命がけでつくった映画。忸怩たる思い」と語る。「映画は自由に表現できる最後の砦。(どんな作品であっても)映画そのものが公益。多くの人がこの問題に対して関心を持ち、文化芸術の役割を考えてもらいたい」。

芸術文化振興会を提訴した原告と弁護団。左から2人目が河村光庸

 弁護団は、今回の助成金不交付決定の特筆すべき問題点として、以下の2点を指摘した。

「当該出演者のシーンの削除や撮り直しをしなかったため助成金が交付されなかった」→出演者の選択(キャスティング)など表現方法への介入
「『公益性の観点から』という曖昧かつ漠然とした理由で助成金の不交付を決定」→今後の文化芸術活動、その他の表現行為に大きな萎縮効果を与える

 「表現の自由」に対する制約が看過できないほど大きく、「萎縮の連鎖」を食い止める必要があると主張している。

 なお同作は完成当時のまま上映されており、第41回ヨコハマ映画祭では出演した俳優・池松壮亮が主演男優賞を受賞するなどの評価を受けている。

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