「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付撤回を求める署名の提出が急遽取りやめられた。ReFreedom_Aichiは会見を開き、参加アーティストの小泉明郎と藤井光らが代表して報告を行った。
小泉明郎によれば、ReFreedom_Aichiは、以前より宮田亮平文化庁長官への直接的な署名提出を文化庁に通達しており、そのための会議室の用意も打診していたという。
だが、文化庁からは担当部署の受付で受け取るとしか返答がなく、会議室を用意することは、提出日の前日遅くにようやく連絡があった。実際に用意されたのは通路のような小部屋であり、また宮田長官は忙しく時間が取れないと通達された。こうした文化庁の態度は、10万人を超える署名を渡すにはあまりに誠意を欠いていると判斷、提出の見送りを決めた。
藤井光は、提出時に、文化庁の担当者から新たに語られたことを発表。「これまで、審議官が不交付を決定したとされていたが、決定以前に文化庁のなかでミーティングをしていたことが明らかになった」と強調した。また、文化庁は、不交付の議論の進捗について宮田長官に報告していたとも回答しており、知っていたという点で宮田長官にも責任があると指摘。「どのような議論において挨拶の中止や不交付を決定したのか、プロセスを知ることがない限り、反対を署名した方々の理解を得られない」と見解を述べた。
ReFreedon_Aichiは、不交付決定の実際のプロセスを知り、検討するために、今後も宮田長官との会合の場を設定するよう文化庁に呼びかけていくという。
なおこの日はReFreedon_Aichiのアーティスト以外にも、署名提出に賛同する識者8名が登壇した。
文化庁の補助金採択の審査委員を務めており、補助金不交付を機に辞任した鳥取大学教授の野田邦弘は以下のように述べた。「自民党の憲法改正草案には『公益』という言葉が多用されている。国の方針が文化庁の事業全体に波及しており、単一の事象としてではなく、これまでに起こってきたことと一体で考えることが重要だ」。
美術批評家連盟の林道郎は「文化庁の中には志のある人もおり、聞く所によれば今回の決定は寝耳に水だったという。文化庁の人にも内側から頑張ってもらえるよう、うまくコミュニケーションをしていければ」と、文化庁側との連携の可能性も示唆した。
また、今回の参加者のメーリングリストがつくられることも発表され、次のアクションに向けて各団体が連携していくことが確認された。