「写真新世紀」は写真表現の可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした、キヤノン主催の文化支援プロジェクト。今年で29年目を迎え、新人写真家の登竜門としても知られる本賞に、今年は1959名の応募があった。
今年7月には優秀賞受賞者7名と佳作受賞者14名が選出。このたび11月8日に行われたグランプリ選出公開審査会で審査員の合議により、中村智道のグランプリ受賞が決定した。
中村智道は1972年岡山県出身。04年頃から独学でアニメーション制作を始め、07年にアニメーション作品 《ぼくのまち》を制作。イメージフォーラム・フェスティバル奨励賞を受賞した。08年に制作した《蟻》は、ポンピドゥー・センター(パリ)やソフィア王妃芸術センター(マドリード)でも上映され、14年には初のストーリー作品《天使モドキ》を発表。しかしその後、体調を崩し、絵を描くことができなくなる。そのような状況のなか、父の闘病と死、そして自身の闘病を、写真によって作品化しようと試みたのが受賞作《蟻のような》だ。
中村智道は受賞の感想を次のように述べている。「受賞できたのは、運がよかったからだと思います。そして、まだ道程だと思います。作品を制作する世界に残れたという感じがしますし、これからも続けていきたいです。ものをつくる、かたちになるというのは、強い力を持つと信じています。このたびは本当にありがとうございました」。
なおグランプリ受賞作品を含む、優秀賞および佳作の受賞作品は、東京都写真美術館にて11月17日まで開催中の「写真新世紀展 2019」で見ることができる。