東京・上野にある国立西洋美術館。この美術館の根幹を成す「松方コレクション」のひとつであるエドゥアール・マネ《嵐の海》(1873)を、スイスのベルン美術館から購入したと発表した。購入金額は約4億円。
《嵐の海》は、もともと松方幸次郎による西洋美術のコレクション「松方コレクション」に含まれていた作品で、第二次世界大戦中にフランス国内で売却された後、行方がわからなくなっていた。しかし2014年、ナチス時代の画商ヒルデブラント・グルリットの息子、コルネリウス・グルリットの家から見つかった約1500点の作品からなる「グルリット・コレクション」の一部として発見され、大きな話題となった。
本作は、「グルリット来歴調査プロジェクト」による調査を受け、ナチス略奪品でないことが確認されている作品。ベルン美術館はグルリット・コレクションの管理費用を補填するため、本作を国立西洋美術館との話し合いのうえ、売却したという。
ベルン美術館のマルセル・ブリュールハルト(ベルン美術館/パウル・クレー・センター理事、グルリット・プロジェクト担当)は、今回の作品売却について「ベルン美術館においてここ5年間に累積してきた費用にあてる資金を集めるために必要なもの」とコメント。同館館長であるニナ・ツィマーは、「本作が日本における精神的故郷ともいうべき場所へ帰還することは、双方の館に恩恵をもたらす理想的な解決法」と述べている。
松方コレクションについては、松方幸次郎が1916年から約10年間に渡り3000点以上の美術品を集め、フランスに残ったその一部375点が国立西洋美術館設立の核となった。同館では、散り散りになった松方コレクションを買い戻す作業を行っており、その数はすでに約270点に上る。今年6月には、開館60周年として「松方コレクション展」が開催。60年にわたって行方不明だったモネの大作《睡蓮、柳の反映》(1916)が修復後初めて公開されるなど、大きな話題を集めたことは記憶に新しい。
本作《嵐の海》も同展で展示されていたが、今年度中には収蔵品として、常設展示室において公開されるという。