地下鉄や都市の壁などに名前を記すエアロゾル・ライティング(グラフィティ)から文字を取り除き、描線のみを抽出した「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」をモチーフとする大山エンリコイサム。2017年に大山は、アメリカで初となる美術館個展「ユビキタス─大山エンリコイサム」を、カンザス州のマリアンナ・キストラー・ビーチ美術館で開催。国内においても、ポーラ美術館での個展に続き、現在中村キース・ヘリング美術館で個展「VIRAL」を開催中だ(〜11月17日)。
マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館での個展では、グローバル社会における多様性や、移民・難民を含むボーダーレスに移動する横断的生活というマクロな事象をQTSと重ねた大山。いっぽう中村キース・ヘリング美術館で開催中の「VIRAL」展では、同館の主要コレクションであるキース・ヘリングがHIV感染者であったことの関連から、QTSをウイルスというミクロな事象に擬えている。
2つの個展を通じて、QTSの表現を深めた大山。今回、両展のカタログの刊行を記念したトークイベント「拡散・横断・身体・造形」が、東京・恵比寿のNADiff a/p/a/r/tで開催される。美術評論家の中尾拓哉をゲストに、2つの展覧会に関する共通点と差異が語られるという。