文化庁のあいちトリエンナーレ2019に対する補助金不交付決定が、内部でも歪みを生み出している。
文化庁は2018年度から、「日本における現代美術の持続的発展を目指し、現代美術関係者の意見を幅広く集約し、日本人および日本で活動する作家の国際的な評価を高めていくための取り組みなどを推進する」として、「文化庁アートプラットフォーム事業」(以下、プラットフォーム事業)をスタート。この事業に関わる美術関係者のうち13名が「有志」として、補助金不交付決定の撤回を求める意見書を出したのだ。
有志として名を連ねるのは、植松由佳、大舘奈津子、川口雅子、小山登美夫、柴原聡子、高橋朗、中尾浩治、成相肇、林道郎、アンドリュー・マークル、山峰潤也(および他2名)。
萩生田光一文部科学大臣と宮田亮平文化庁長官宛に出されたこの意見書では、「補助金の全額を、いわば後出しの結果論で取り下げることは、未来に対して悪しき前例になる」と指摘。
過去2年間にわたってプラットフォーム事業に携わってきた経緯を踏まえ、「今回の事後的な助成金不交付の決定は、『国際化』という事業の企図に真っ向から対立し、私たちの努力を水泡に帰すような事例であるだけではなく、そもそもの理念を文化庁および現在の日本政府自身が深く理解していなかったのではないかとの疑念さえ起こさせます」と痛烈に批判している。
また今回の補助金不交付の理由は「展示に対する脅迫の是認、検閲の正当化ともとらえられかねません」とし、文化庁が発すべきメッセージは「どのような脅迫やテロに対しても、国際芸術祭を守るというものであるべきはずです」と強調。「不交付の方針が現実に決定されてしまったいま、私たちが現在関わっている事業は、文化庁の『非国際的』な体質を隠蔽するためのアリバイ事業だという風にみなされる恐れも大いにあります」としている。
有志は「不交付の方針を固めるに至った経緯の詳細な説明を求める」とともに「もしその決定が覆されない場合は、アートプラットフォーム事業への関わり方を検討せざるをえない」としており、副座長・林道郎はすでに辞表を送付したことを明らかにしている。
文化庁は9月にプラットフォーム事業の記者向け勉強会と、シンポジウム「グローバル化する美術界と『日本』:現状と未来への展望」を開催したばかりだった。