1973年にオープンして以来、渋谷のカルチャー発信拠点であった渋谷パルコは2016年に一時閉店し、建て替え工事が進められてきた。そして2019年11月下旬、この渋谷パルコが生まれ変わる。
「世界へ発信する唯一無二の“次世代型商業施設”」をビルコンセプトに掲げる渋谷パルコ。「ノンエイジ」「ジェンダーレス」「コスモポリタン」をターゲットに約180のテナントが出店し、「FASHION」「ART&CULTURE」「ENTERTAINMENT」「FOOD」「TECHNOLOGY」の5つ柱を構成する。
ここではこのうち、「ART&CULTURE」にフォーカスしてみたい。
まず、4階にはパルコによるミュージアム「PARCO MUSEUM TOKYO」が開館し、アートやデザイン、ファッションなどの企画展を開催。ロゴはデザイン集団「TOMATO」が手がけ、内装はインテリアデザイナー・山本大介と天水義敬からなるde:signが担当する。
いっぽう地下1階には、渋谷スペイン坂にあったパルコのギャラリー「GALLERY X」が移転。アートのみならず、アニメやゲームなどまで、パルコが編集する企画を展開していくという。
シンガポールを拠点に活動するクリエイティブ・ディレクター、テセウス・チャンが環境デザインを手がける2階には、コムデギャルソンやイッセイミヤケ、アンダーカバーなどとともに、美術出版社がプロデュースする初の直営店「OIL by 美術手帖」が進出。現代美術を中心とした展示やイベントを行う予定だ。
地下1階にも注目したい。「CHAOS KITCHEN」と題されたこのレストランフロアは、武蔵野美術大学 美術館・図書館などを手がけてきた建築家・藤本壮介が環境デザインを担当。同フロアには、旧渋谷パルコ・パートⅠの外壁に設置されていたネオンサインのうち「C」を恒久展示する。この「C」は、Chim↑Pomが2012年にパルコミュージアムで行った個展で、「P」とともに作品の一部として使用された過去がある(なお7階には「R」、8階には「P」が設置される)。
このほか、旧渋谷パルコパートⅠとパートⅢの間にあった道路は、24時間通れる歩行者専用通路「ナカシブ通り」として生まれ変わり、通路に面するビル2階には幅約17メートル、高さ約3メートルのアートウィンドウが登場する。
また自社運営のミニシアターとして映画館「CINE QUINTO」では、オープニング作品として草間彌生のドキュメンタリー映画『KUSAMA: INFINITY(原題)』を日本初上映する。
なお、2020年3月には8階にパルコ文化発信の核となる「パルコ劇場」がグランドオープン。席数は旧劇場の約1.5倍となる636席に拡張し、すべてがS席となる。年間の公演はすべてパルコが自主プロデュースするという。
インバウンドの増加とともに、多くの人々が訪れ、大規模再開発も進められている渋谷。パルコ代表執行役社長・牧山浩三が「エンターテイメントシティ・渋谷のヘソになりたい」と語る通り、新生・渋谷パルコが新たな渋谷のカルチャー発信拠点になることが想像できる。