ロンドンのサザビーズに登場し、100万ポンド(約1.5億円)で落札と同時に額縁に隠されていた装置で自ら切り刻まれるという”事件”を起こしたバンクシーの作品《Girl with Balloon》(2006)。その後作品タイトルを《Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)》に変えたことが発表されるなど、まだまだ話題は続いている。
そんななか、世界有数のメガギャラリー「ガゴシアン」がInstagramで「Banksy follows Rauschenberg in creating through destruction(バンクシーは、破壊から創造を生み出したラウシェンバーグをの手法を摸倣している)」と投稿。これは、バンクシーの《Love is in the Bin》は、ロバート・ラウシェンバーグ(1925〜2008)の《Erased de Kooning Drawing》(1953)のオマージュではないかという指摘だ。
ラウシェンバーグは20世紀アメリカのネオ・ダダを代表するアーティストのひとり。靴、タイヤといった街から拾い集めたものと抽象画を組み合わせた「コンバイン・ペインティング」シリーズなどで知られる。
そして、そのラウシェンバーグによる《Erased de Kooning Drawing》(1953)とは、ラウシェンバーグが、尊敬する作家であるウィレム・デ・クーニングのドローイングを消しゴムで消した作品である。これは「消滅」によって作品を再生産することができるかを試みた作品であるとされる。
このアイデアを思いついたラウシェンバーグは当初、自作のドローイングで「消滅」を試作。しかし、より評価の確立されたアーティストの作品で行うことに意味があると判断し、デ・クーニングにドローイングを依頼をした。ラウシェンバーグの友人、ジャスパー・ジョーンズも関わっているとされている本作。「消された」ドローイング作品は、その後の調査によってデ・クーニングが1950〜55年頃に制作した「女」シリーズのひとつではないかとされている。
ガゴシアンのこのInstagramの投稿に対して、コメント欄では「全然違う」など否定的な意見が目立つものの、「つながりが見出されて面白い」など、バンクシーを発端とした美術史の発見を楽しむコメントも散見される。