「ヒロシマ賞」は、世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を美術を通して世界へ訴えることを目的に1989年に創設された。第1回を三宅一生が受賞して以来、3年に一度、国内外の作家に授与されている。
第10回となる今回受賞したのは、モナ・ハトゥム。パレスチナ人の両親のもと、レバノンの首都ベイルートで生まれたハトゥムは、イギリスに旅行中の75年、レバノン内戦の勃発により帰国できなくなり、以来ロンドンとベルリンを拠点に活動している。自伝的なアプローチと身体的な感覚を通して表現したパフォーマンスや映像作品、ジェンダーや政治的な課題などの普遍的な問題を扱ったインスタレーションなど、幅広い表現を行う。
日本初の個展となる本展では、インスタレーション、立体・平面作品、映像作品など、幅広い創作活動の全貌を紹介するほか、2015年11月に広島を初めて訪れたハトゥムが被爆の実情に触れて制作した新作5点も初公開される。受賞メッセージのなかで「壊滅状態からの回復力と復興は、我々人類を鼓舞する希望の心を体現しています。」と語るハトゥムが、「ヒロシマの心」をどんなかたちで表現するのか注目だ。