読本、錦絵、肉筆画など、多岐にわたる分野で活躍し、ヨーロッパのジャポニスムにも多大な影響を与えた葛飾北斎(1760〜1849)。約70年にわたる画業のなかでもっとも人気を博したのが、浮世絵風景版画というジャンルを確立させた記念碑的作品、「冨嶽三十六景」だ。MOA美術館が所蔵する「冨嶽三十六景」は、全図が揃う希少なコレクションとして知られる。
「冨嶽三十六景」は、「裏富士」と呼ばれる追加出版された10図を加えた46図からなる。さまざまな季節や視点で富士をとらえ、その豊かな表情を表現した作品だ。
通称「赤富士」と呼ばれる《凱風快晴》は、数ある作品のなかでも指折りの一枚。本展ではこれに加えて、「波の画家北斎」の名を生んだ名作《神奈川沖浪裏》、山麓に稲妻が光る《山下白雨》のいわゆる「三役」をはじめとする、46図すべてを一挙に公開する。
さらに、北斎作品に強く影響を受けたとされる歌川広重が制作した、保永堂版「東海道五十三次」のなかから約20図を展示。広く親しまれている江戸末期の2大浮世絵風景版画を楽しむことができる。
2017年2月にリニューアルオープンしたMOA美術館。新しくなった低反射高透過ガラスにより、作品の風合いや細部を鑑賞しやすくなった。写真撮影も可能なので、この機会に足を運んでみてはいかがだろう。