子どもたちのなにげないしぐさや表情、心のわずかな動きまで、やさしい視点でとらえて描き出す林明子。代表作『はじめてのおつかい』(1976年)、『こんとあき』(1989年)をはじめ、『おふろだいすき』(1982年)、『おつきさまこんばんは』(1986年)、『ひよこさん』(2013年)など、絵本の魅力は時が経っても色あせることがなく、長く読み継がれている。
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丹念に描かれる子どもたちの絵には、じつはすべてモデルがいるという。姪や甥など身近な子どもたちと一緒に遊んだり、ポーズをとってもらったりして撮影したスナップ写真を参考にしながら1点ずつ描いてきた。そんな林にとって絵本は「懐かしい日々に出会えるアルバムのような存在」なのだという。
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本展では、約200点の原画を展示するほか、制作のための資料やラフスケッチなども展示され、制作背景に触れることができる貴重な機会だ。また、会場で販売される展覧会図録には、絵本作家・五味太郎との対談や、アトリエ写真集なども収録され、展覧会とはひと味違った楽しみ方のできる一冊になっている。
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