2004年の設立以来、横浜市の創造都市構想のもとでオルタナティブスペースを拠点に活動を展開し、アートを通じて都市や社会の構造を再解釈する実践を重ねてきたBankART1929。2024年度をもって約20年にわたる施設運営契約を終えた同組織は、恒常的な拠点を持つフェーズから一歩踏み出し、都市そのものの内部へと直接介入する新たな活動段階へと移行している。
その転換を明確に示す自主事業の第一弾が、今回開催される保良雄の個展「TOTEM ORGA(H) /トーテムオルガ」だ。本展は、アーティストと伴走しながら、都市や社会に内在する制度や不可視化された構造を批評的に捉え直す試みであり、稼働中の都市基盤施設を会場とする点に大きな特徴がある。
会場となるのは、新横浜駅近くに位置する横浜市の下水処理施設「港北水再生センター」。横浜市は、港の開港と急速な人口集中を背景に、明治期以降、日本における都市化と衛生行政を先導してきた都市のひとつだ。下水道は、感染症対策や生活環境の改善を目的として段階的に整備され、戦後の高度経済成長期を経て、現在では都市機能を支える不可欠なインフラとして発展してきた。

一般に下水処理施設は、雨水排水による浸水防止や、家庭・都市活動から排出される汚水を集約し、物理的・化学的・生物学的工程を通じて水を再生する役割を担う。また、その過程で生じる汚泥は、肥料や資材として再利用される。こうした施設は、都市の表層からはほとんど意識されることのない場所で常時稼働しながら、公共衛生の維持、水環境の保全、資源循環といった複数の機能を同時に支えている。
本展は、作家・保良雄の身体経験を起点に、存在の配置そのものを組み替える試みとして構想された。先天性障がいという立場から存在のあり方と向き合ってきた保良は、人間と非人間、主体と客体といった区分を超え、あらゆる存在を単一の水平軸上に並べ直す視点で世界を捉えてきた。
港北水再生センターは、人間の排泄物を汚泥や再生水、資材へと変換する循環装置であり、「自然の循環を模した人工臓器」とも言える存在。本展では、汚泥、再生水、微生物といった都市の内奥で脈打つ要素が個展を構成する一部として再配置される。


























