東京・神宮前のLAGで、美術家・吉國元による個展「深い河(DEEP RIVER)」 が開催される。会期は11月21日〜12月13日。
吉國は1986年、ジンバブエ・ハラレに生まれ、96年に日本へ移住。以後、自身の経験を描くとともに、他者の語りに耳を傾けながら、絵画や出版などを通して表現活動を続けてきた。2020年には在日アフリカ人への聞き書きをまとめた『MOTOマガジン』を創刊し、今年その第3号『根拠地』(印刷=Live Art Books)を刊行。また、来年3月には岐阜県美術館で開催される展覧会「モンスーンに吹かれたように―大移動と交流のアフリカ/アジアの現代美術―」への参加も予定されている。

© Moto Yoshikuni
本展では、2023年の連作「来者たち/Arrival」以降の取り組みを基点に新作を発表。国家や国境といった大きな枠組みがもたらす制約を意識しつつも、普遍的な思考や感情を絵画として提示するという。作品を通じて、描かれた人物やその人と作家との関係を起点に、歴史や社会、場所に刻まれた記憶と響き合わせながら、多層的な状況を浮かび上がらせ、鑑賞者に様々な想起を促すものとなる。
深い河、神よ、わたしは河を渡って、集いの地に行きたい
ー黒人霊歌
色鉛筆の連作「来者たち/Arrival」の制作と展示が一段落した2023年頃から、これからは自分の足元を見つめなおしたいと思うようになった。その時期は、日本に移住をしたジンバブエ人の聞き書きを始めていて、それは後に『MOTO magazine Vol.003 根拠地』(2025年6月刊)にまとめることが出来た。あとがきに次のことを書いた。
「落下して散らばったいくつもの硬貨のような人々の移動の軌跡を思う。なにが僕たちの生を規定するのだろうか。国家・貨幣・パスポートの支配から僕たちは逃れられないのか。従うしかないのか。しかし、それでも僕たちは、それぞれの持ち場で自分らしく生きるための工夫を怠らない。遠くを想い、大切な人がその人らしく生きていてくれることを願う。」
生まれた土地に根付いた生活をする(あるいはそうせざるを得ない)人々がいて、一方で、故郷を離れ、移住を余儀なくされた人々がいる。雑誌は「根拠地」という副題をつけたが、2025年に描いた絵を集めた本展のタイトルを「深い河」にしたのは、歴史の底流にある意識や感情に触れることによって、他者たちとつながることを願ったからである。
「深い河」は、太古の河のように流れる静かな時間のことであり、遠くの場所や人との合流を期待することでもある。私は河を渡りたい。
吉國元
プレスリリース「Artist statement」より引用

© Moto Yoshikuni

© Moto Yoshikuni
なお、会期中の 11月22日 には、文筆家・翻訳家の榎本空を迎え、トークイベント「『深い河』を遡行する」も実施予定(定員40名・事前受付制)。こちらもぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
























