「恥ずかしいこと」「汚らわしいこと」とされ、曖昧に隠蔽される傾向がある「性」。これに真正面から向き合う展覧会が「性欲スクランブル」だ。
刑法175条によって、「わいせつ」の定義がなされている現在の日本。しかし、櫛野はこれについて「インターネット上には露骨な性があふれ、従来の『わいせつ概念』を適応し続けていることについてははなはだ疑問が残る」としている。
明治以前は、各地に残る性器崇拝や、混浴の公衆浴場など、自然な裸体そのものに特別な罪や羞恥心の意識を見出すことはなかった。しかし、近代化の過程で禁欲的な欧州的倫理観を模範として、明治政府は裸体・混浴・性風俗に関する様々な禁止政策を打ち出し、日本社会は裸体を当然なものとする社会から、裸体を「わいせつ」とする社会へと変化を遂げていったと櫛野は言う。
その一方、「性器が露出しているかどうか」を判断基準とする性器中心主義的な規制が、様々な性に対する表現を生み出していった。
本展では、とある老人が自らの妄想を具現化し、蝋人形師につくらせた性器蝋人形を集めた「都築響一の性器蝋人形コレクション」をはじめ、性への飽くなき追求から生み出された4組の表現を紹介。現代の多様な性文化のあり方を提示する。