世界を舞台に、オートクチュールや舞台衣裳のデザイン、ブランド「ハナエモリ」の創始者として活躍してきたファッションデザイナー・森英恵が老衰のため逝去した。享年96歳。
森は1926年島根県生まれ。結婚後に東京・目黒のドレスメーカー女学院(現ドレスメーカー学院)に通って服飾を学び、51年に新宿でブティック「ひよしや」を開店した。
1961年に森はパリへ外遊した際、シャネルのオートクチュールのショーを見学し、女性が女性のためにデザインするその服に感銘を受ける。同年に、ニューヨークを訪れた森は、デパートで粗悪品として格安で売られる日本製のブラウスに失望し、さらに外国人に捨てられる哀れな日本人女性を描いた『蝶々夫人』の舞台を見て憤慨することになる。この経験から、森は日本人女性の世界におけるイメージを、ファッションを通じて変えたいという強い思いに駆られ、ニューヨークでの作品発表を決意した。4年後の65年には、ニョーヨークでショーを実現。蝶をモチーフとしたドレスが受け、「マダム・バタフライ」の名で世界への階段をのぼりはじめた。
その後、美空ひばりの衣裳デザインやバルセロナ五輪の日本選手団のユニフォーム、皇太子妃が結婚の儀にて着用した礼装のデザイン手掛け、1988年には紫綬褒章、1996年には文化勲章を受賞した。
2020年には水戸芸術館でその仕事の軌跡と思想をたどる展覧会「森英恵 世界にはばたく蝶」が開催(新型コロナウイルスのため会期途中で閉幕)されたばかりだった。