コロナ禍によって二度延期された「スーラージュと森田子龍」が今年、兵庫県立美術館で開催される。会期は3月16日〜5月19日。
本展は、フランスのアヴェロン県と兵庫県との20年をこえる友好提携を記念して行われるもので、1950年代から直接交流のあった画家のピエール・スーラージュ(1919〜2022)と書家の森田子龍(1912〜1998)の2人展だ。
スーラージュはフランス南西部アヴェロン県ロデーズ生まれ。画業の最初期から晩年に至るまで、一貫して抽象を追究した。2014 年、故郷ロデーズに、その名を冠した美術館が開館。生誕100年を記念し、2019年12月から20年3月にかけて、ルーヴル美術館で個展が開催されている。生前にルーヴルで個展が開かれたのは、ピカソ、シャガールに次いで3人目だ。本展において、スーラージュ美術館から出品される17点のうち16点は日本初公開。もう1点は、1951年に日本で初めて展示されたスーラージュの作品で、約70年振りの来日となる。
いっぽうの森田は兵庫県豊岡市生まれ。世界的に知られる前衛書家として活躍。雑誌編集者としての側面もあり、師の上田桑鳩のもとで1939年頃から『書道芸術』の、戦後の1948年からは『書の美』の編集に携わる。1951年『墨美』を創刊、1981年に301号で終刊するまで、「書芸術雑誌」として幅広い内容を取り上げた。その作品は、50年から60年代にかけて海外で開催された展覧会に次々と出品され、大きな注目を集めた。森田の展覧会が神戸で開催されるのは約30年振りで、本展では約30点の作品が一堂に会する。
森田は『墨美』で欧米の抽象絵画を次々と紹介しており、スーラージュとの関係も、同誌をきっかけに始まった。『墨美』26号(1953年8月)には、本人から提供された作品写真10枚が掲載されている。
モノクロームの作品を描く画家たちを、森田は「白黒の仲間」と呼び、1958 年に初来日したスーラージュは、森田らと直接、意見を交わした。また63年にはヨーロッパを歴訪した森田が、パリでスーラージュ夫妻と再会している。
戦後の抽象絵画を代表する画家のひとりである「黒の画家」ピエール・スーラージュと、「墨人会」を結成して新しい書のあり方を追い求めた森田子龍。本展は、二人の作品合わせて約50点に加え、書籍や日記などの資料を通して、芸術家の出会いを振り返るものとなる。なお巡回はない。