思文閣銀座のゲストキュレーターを招聘する展覧会シリーズ 「Ginza Curator’s Room」。その第4回目として、インディペンデント・キュレーターの山峰潤也を招致した「反復の圏域 -Repetitive Sphere-」を開催されている。会期は7月8日まで。
本展は、前衛書を牽引した「墨人会」を1952年に結成して書の再解釈と独自の表現を志向した森田子龍と、ストリートアートの一領域であるエアロゾル・ライティングを分析し、その再構成から生まれた「クイックターン・ストラクチャー」を起点に活動を行う大山エンリコイサムによる二人展だ。
大山は1983年東京都生まれ。2007年に慶應義塾大学卒業、2009年に東京藝術大学大学院修了。2011-12年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、ブルックリンにスタジオを構えて制作。これまでに大和日英基金(ロンドン)、マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス)、ポーラ美術館(箱根)、中村キース・ヘリング美術館(山梨)、タワー49ギャラリー(ニューヨーク)、神奈川県民ホールギャラリー、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(東京)などで個展を開催してきた。『アゲインスト・リテラシー』(LIXIL出版)、『ストリートアートの素顔』(青土社)、『ストリートの美術』(講談社)、『エアロゾルの意味論』(青土社)などの著作を刊行。2020年には東京にもスタジオを開設し、現在は二都市で制作を行なう。
森田は1912年兵庫県生まれの書家。名は清。上田桑鳩に師事し、書の革新を志し、井上有一らと墨人会を結成するとともに、書芸術誌「墨美」を創刊、長く編集主幹を務め、新しい書芸術のあり方を国内外に発信し続けた。京都市文化功労者。2000年に紺綬褒章。
ふたりの作品には半世紀ほどの時間の隔たりがありながらも、書くことと描くこと、身体性とドローイングの関係など、多数の共通点をもっている。会場では、森田の「圓」を書いた5点と、その反復と差異に呼応するかのようにクイックターン・ストラクチャーを変奏した大山の新作5点が展示される。
キュレーションを務める山峰は東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館現代美術センターにて、キュレーターとして勤務したのち、ANB Tokyoの設立とディレクションを手掛ける。その後、文化/アート関連事業の企画やコンサルを行う株式会社NYAWを設立。主な展覧会に、「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」、「霧の抵抗 中谷芙二子」(水戸芸術館)や「The world began without the human race and it will end without it.」(国立台湾美術館)など。また、avexが主催するアートフェスティバル「Meet Your Art Festival “NEW SOIL”」、文化庁とサマーソニックの共同プロジェクトMusic Loves Art in Summer Sonic 2022、森山未來と共同キュレーションしたKOBE Re:Public Art Projectなどのほか、雑誌やテレビなどのアート番組や特集の監修なども行ってきた。
以下に、本展に際しての山峰のステートメントの一部を抜粋する。
それぞれの作家は解体された言語体系を用いて、再構成しながら作家固有の言語体系を作り上げていく。そしてまたそれは作家の表現の中で反復されていくことで、共通言語としての強度を築いていく。こうしたそれぞれのスフィア(圏域)の重なりから、本展を『反復の圏域 -Repetitive Sphere-』と名付けることとした。