「得体の知れない図形にその名前を書くことで、それがそのものになる」──書の概念を覆すようなコンセプトで評価が高まりつつある書家・山本尚志の個展「ナミ」が、福岡のArtist Cafe Fukuokaで開催される。会期は2月3日〜3月31日。
山本は1969年広島県生まれ。幼い頃より書に親しみ、19歳のときに書家・井上有一の書に出会ったことで、本格的に書の世界を志した。1991年には、美術評論家で山本の師でもある海上雅臣が主宰するウナックトウキョウで、井上有一カタログレゾネのための作品整理に携わった経験を持つ。
15年にウナックトウキョウからデビューしたのち、翌年にはユミコチバアソシエイツに移籍。17年からは、コレクター・佐藤辰美監修のもと「ART SHODO」の活動を立ち上げ、後輩を輩出してきた。これまでの主な個展には、「入口と出口とフタと底」(2019、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku)、「マド」(2020、PLACE by method)、「ゲーム」(2022、福屋八丁堀本店美術画廊)、「モーターショー」(2022、あかまんま)などがある。
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井上有一の作品と出会い、海上雅臣をはじめとする様々な人々との交流のなかで自らの書のスタイルを模索してきた山本は、「得体の知れない図形にその名前を書くことで、それがそのものになる」という書が持つ力に着目し、新時代の書家として活動を続けている。
本展では、幅2.4メートルにもおよぶ超大作《ナミ》のほか、最新作《マシーン》、レディメイド作品の《モーターショー》など、ここ数年の近作を一堂に展示。「モノにモノの名前を書く」という独自のスタイルで新たな書の世界を切り拓く山本の作品群に注目だ。
なお、3月11日には美術評論家・清水穣と山本が現代アートとART SHODOについて考えるトークイベントも実施される。
押し寄せてくる「ナミ(=波)」を切り取り、そこに名前を書いた作品。
ナミは海の一部であり、海でもいいはずなのに、あえてナミと呼ばれるのは、海にない特徴をナミが持っているからだ。
人は何かに名前をつけて理解する。波、津波、波間、波風、波路、これらの分類が理解を細分化し、正確な情報の通路となる。
ナミを切りとるとは、絵画ではあり得ない。それこそが書の仕事であると思い制作した。
波を波として理解することは、もはや言語活動なのである。言語アートとして、今後書がどう扱われるのか。それを問いかけたい。(山本による本展ステートメント)
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