今年3月に惜しまれつつこの世を去った坂本龍一と、ダムタイプとしても活躍を続ける高谷史郎。この二人のコラボレーションによるシアターピース『TIME』が、2024年に新国立劇場とロームシアター京都で上演される。
『TIME』は、1999年に日本武道館と大阪城ホールで上演され、チケット約4万枚が即完売した公演『LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999』に続き、坂本龍一が全曲を書き下ろし、高谷とコンセプトを考案、創作したもの。2017年から約4年の製作期間を経て、21年に坂本がこの年のアソシエイト・アーティストを務めた世界最大級の舞台芸術の祭典「ホランド・フェスティバル」(オランダ・アムステルダム)で世界初演され、高い評価を得た。
観客は、暗闇の中で雨音だけが響く客席空間に足を踏み入れ、鑑賞体験が始まるというもの。水鏡のように舞台上に揺らぐ水面と、精緻な映像を写しだすスクリーンで構成され、夏目漱石の「夢ゆめ十夜じゅうや」(第一夜)などのテキストとともに紡がれる。出演は田中泯、宮田まゆみ(笙)、石原淋。パフォーマンスと、サウンド/インスタレーション/ヴィジュアルアートが劇場空間で融合する注目の作品だ。
本作上演に際し、高谷は以下のようなコメントを寄せている。
坂本龍一さんと⾧い時間をかけて創作に取り組んだ『TIME』がようやく日本で上演の運びとなりました。奇しくも東京公演の初日は一周忌。坂本さんの訃報を聞いた時、この偶然に慟哭し言葉を失いました。2021 年コロナ禍のアムステルダムでの初演は、田中泯さん、宮田まゆみさん、そしてチーム全員が一丸となって坂本さんと共に成し遂げた奇跡の初演でした。私は幸運にもこれまで数多く坂本さんと作品を制作させていただき、その過程で多くのことを学びました。『TIME』のテーマである「時間」についても様々な角度から多くのことを語り合いました。坂本さんが思索を重ね情熱を持って作り上げた『TIME』。他の作品と同様に『TIME』も坂本さんのアイディアで埋め尽くされています。そのシンプルな構造の中に何重にも様々な思想が織り込まれていて、坂本さんがプロットされたより深い意味を、今後も作品を上演していくたびごとに、私自身、理解を深めていくのだと感じています。終盤、舞台に響く藤田六郎兵衛さんの笛の音は、六郎兵衛さん生前最後となってしまった演奏を、渡邊守章先生演出の舞台公演の際に急遽記録させていただいた音源であり、坂本さんの強い思いでこのシーンが生まれました。すべてが奇跡のようであり夢のようであり、それは「時間」の中に、存在します。(プレスリリースより)