かつて造船の町として知られた大阪・北加賀屋は、工場や倉庫、造船所労働者向け住宅であった建物を活用したクリエイティブの拠点や美術作品の展示が点在し、「アートのまち」として知られている。この町を舞台に、美術保管庫・MASKや森村泰昌の個人美術館「M@M」、シェアスタジオ「Super Studio Kitakagaya」などで、10月27日〜11月5日に秋のアートイベントが複数開催される。
約1000平米の工場・倉庫跡で、国際的に活躍するアーティストの大型作品を保管・展示する「MASK」。ここでは持田敦子の展覧会「Open Storage 2023-拡張する収蔵庫-持田敦子 拓く 2019-2023」が開催される。会期は10月27日~29日、11月3日~5日。持田は2021年、このMASKに新たな入口を出現させる作品《拓く》を制作。また、2022年にはその入口と巨大倉庫エリアを接続し、場所・空間の意味やとらえ方を変容させるインスタレーション作品《Steps》を展開した。こうしたプロジェクトの集大成となる本展で持田は、《拓く》に続く空間で《Steps》の彫刻的なフォルムを追求するという。また、本展には宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、名和晃平、やなぎみわ、ヤノベケンジが参加する予定。
大阪最大のシェアスタジオ・Super Studio Kitakagaya(SSK)では、昨年度から約3分の1の入居者が入れ替わり、現在20~40代の実力派・注目株アーティスト・クリエイター計15名(泉拓郎、大﨑のぶゆき、大槻智央、香川裕樹、河野愛、佐々木愛、品川美香、下寺孝典、髙野千聖、谷原菜摘子、野原万里絵、林勇気、冬木遼太郎、山本正大、葭村太一)が日々活動している。今回のオープンスタジオは、作業場の一般公開に加え、映像作家・林勇気と屋台研究家・下寺孝典がSSK内に作品を展示する。
また、SSKのはなれにあるクリエイターズキッチンでは、料理開拓人として全国各地の生産者を訪ねながら食の活動に取り組む堀田裕介が、11月3日、4日限定で「スースーキッチン」をオープンさせる。
今年11月に開館5周年を迎える美術家・森村泰昌の個人美術館「M@M」では、この周年を記念した展覧会「M@M開館5周年記念展 TAKE5(仮題)」を10月27日より開催。展覧会では、M@Mの5年間の軌跡をテーマに、アーカイヴ展を超えた森村作品の多様なバリエーションも楽しめる展覧会になる予定だ。
クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地)では「KITAKAGAYA FLEA 2023 AUTUMN & ASIA BOOK MARKET」として、10月28日、29日にマーケットを開催。出版社をはじめとするブックメイカーやZIMEメイカー、イラストレーター、美術家、木工作家に農家、美容師、料理人などが参加する。ライブパフォーマンスでは、オーストラリアの先住民族伝統楽器ディジュリドゥの演奏者であり画家のGOMAと、インドの打楽器タブラ奏者であるU-zhaanのユニット「GOMA meets U-zhaan」や、韓国のイ・ミンフィ、イ・テフンの出演を予定。そのほか、DJによるアジアミュージックとアフリカ楽器アーティストの即興セッションも行われる。